「探そう!コミュニティの芽」vol.9~あるコミュニティカフェの世代交代〜

コミュニティづくり2026.09.30広報担当

「探そう!コミュニティの芽」vol.9~あるコミュニティカフェの世代交代〜

こんにちは。ライフデザインラボの船本由佳です。 このコーナー「探そう!コミュニティの芽」では、人と人とのつながりが育まれている現場や、その仕組み、キーパーソンなどを紹介しています。みなさんの生活や暮らし、コミュニティづくりのヒントになれば嬉しいです。

前回(「探そう!コミュニティの芽」vol.8 〜コミュニティカフェって何だろう? 〜)では、横浜市内のコミュニティカフェが連携し、学び合いや情報交換を行うネットワーク「横浜コミュニティカフェネットワーク(YCCN)」副代表の米田佐知子さんに、コミュニティカフェとは何か、まちにある意義を教えていただきました。
今回は米田さんのおすすめで、洋光台の「結café(ゆいカフェ)」を訪ねます。 2017年の開設から年月を重ねた結caféでは、2024年、運営メンバーの大きな世代交代がありました。立ち上げた人たちの思いを、次の人たちはどう受け継いだのでしょうか。結caféの歩みから、地域の活動を次の世代へ手渡していくヒントを探ります。

1)地域の人たちがつくるカフェ

JR洋光台駅から道を渡ったスポーツクラブが入るビルの1階に結caféはあります。中に入ると、ランチを食べる人、おしゃべりをする人、キッチンで料理をする人が、それぞれ自然な距離感で同じ時間を過ごしていました。

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八百屋さんの横を抜けて少し奥まった場所にある結café。大きなガラス窓から店内の様子が見える

結caféは、一般社団法人re net 結が運営するコミュニティカフェです。
日替わりランチの「おうちごはん」のほか、テーブルを使って自分の活動を始められる「Myてーぶる」、ハンドメイド作品などを販売する「アトリエ小箱」など、さまざまな取り組みが行われています。

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取材に訪れた日の「きょうのおうちごはん」は、天津飯、ブロッコリーと海老の塩炒め、トマトサラダ、ニラスープ、そしておまけのフルーツ。980円。同メニューでお弁当だと850円

ランチを提供するだけではなく、店内ではアクセサリー作りのワークショップや子どもの居場所、中国語サロン、編み物クラブなども開かれます。週に一度は、「We canクラブ(横浜市サービス・活動B等補助事業)」も実施して高齢者の暮らしや生活のサポートも行います。
ここは、食事をするカフェであると同時に、地域のさまざまな活動が交わる場所でもあります。

2)カフェをつくる前に、コミュニティがあった

結caféの歴史をたどると、カフェができるより前にさかのぼります。 きっかけは「キャンドルナイト」というイベントでした。隣の港南台エリアで行われていたものを参考に、洋光台版を作ろうと集まったのが、PTAなどでつながりのあった母親たちでした。2013年に第1回キャンドルナイトin洋光台を開催しました。防災の意味も込めて始めたオイルキャンドル作りのイベントは、洋光台の年中行事として定着していきます。

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牛乳パックをおうちの形に切ったキャンドルホルダーが洋光台のキャンドルナイトの定番

キャンドルナイトを始めて二年目ぐらいから、イベントを一緒に運営している仲間たちが集う常設の場所が欲しいという思いが強くなりました。

坂の多い洋光台で、高齢の方も小さな子も来やすい場所を、と探した末にたどり着いたのが今の場所です。以前は沖縄そばのお店だった場所が、店主の早期リタイアを機に居抜きで使えることになり、2017年2月7日、結caféがオープンしました。

つまり、結caféは、「場所をつくり、そこに人を集めた」わけではありません。PTAやキャンドルナイトなどを通して、すでに地域の中に人と人とのつながりがあり、その人たちが「いつでも会える場所がほしい」と考え、その結果として生まれたのが、結caféでした。

3)7人が卒業。「セカンドシーズン」へ

それから年月がたち、2024年、結caféは大きな転機を迎えます。 立ち上げ期から運営を担ってきたメンバーの多くが、活動を卒業することになったのです。 キャンドルナイトの始まりから数えれば、およそ10年。メンバー自身の年齢や体力、家族の介護、仕事など、それぞれの暮らしにも変化がありました。

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初代運営メンバーの卒業のときに現運営メンバーと地域の仲間たちと一緒に撮影した写真。結caféにこめる思いは変わらない

ファーストシーズンから活動してきた平野みきさん(現理事)は、当時をこう振り返ります。 「前のスタッフたちとも楽しくやってきました。でも、スタッフたちにも人生のいろいろな節目があって、私以外の7人が卒業することになりました」。
一方で、店を閉めるという選択はしたくなかったといいます。一度正式に閉店してしまえば、長い時間をかけて地域の中につくられてきた繋がりも途切れてしまいます。何とか続けられないかと考えました。

そこで声をかけた一人が、現在、理事を務める梶田幸子さんでした。梶田さんは、夫の転勤で大阪から洋光台へ引っ越し、親戚も友人もいない土地で子育てを始めた頃から結caféを利用してきました。地域の人たちに親子でかわいがってもらったといいます。 「結caféにはハッピーなイメージしかなかったんです。閉じるかもしれないと聞いて、びっくりしました。直感的に、なくなるなんてダメだと思いました」と、梶田さんは振り返ります。 「大阪出身だけれど、洋光台のおかげで子育てを何とかできたという感覚があります」と梶田さん。 利用者として、この場所から多くのものを受け取ってきた。今度は、自分が担う側になる。こうして、コミュニティカフェの「利用者」が、その場所を受け継ぐ「運営者」になりました。

理事に新たに加わったもう一人の佐藤美由紀さんは、アメリカ生活を経てコロナの時期に日本に戻り、ボランティア先を探していました。アメリカではボランティアに参加する機会が多かったのに日本では少ないと感じ、探し続けた末にたどり着いたのが結caféでした。

2024年2月には、活動に関心のありそうな地域の人たちに集まってもらい、「これからやり方が変わります」と説明する会を開催しました。世代交代の時、前のメンバーから新しいメンバーへ伝えられた言葉は、「前と同じことはしなくていい。新しいメンバーがやりやすいようにやるのが大切」。その一言が、世代交代の土台になりました。

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写真の右側の壁沿いにあるのがハンドメイド品などを販売する「アトリエ小箱」。地域活動の応援のために中央のテーブルは「Myテーブル」として地域の人に貸し出される。この日の夕方は新理事の佐藤美由紀さんが中心となって開催している英会話サロンが開かれていた

4)まず、関係性をつくる

以前は7、8人ほどの理事を中心としたスタッフが交代で店を支えていました。現在の理事は4人です。人数も違えば、それぞれの生活環境も違います。同じ運営方法をそのまま続けることはできません。 そこでセカンドシーズンでは、理事だけですべてを担うのではなく、地域のボランティアが、それぞれできることを持ち寄る仕組みに変えていきました。

現在、活動しているボランティアは20人以上。日替わりの「おうちごはん」をつくるキッチンには、栄養士の資格を持つ人、給食室で働いていた人、大家族の食事をつくってきた人など、さまざまな経験を持つ人が参加しています。その日の献立を考え、買い出しから調理までを担当する人、調理を補助する人、片付けを担当する人。3人ほどがチームになって厨房に入ります。
運営する人の数は減りました。でも、関わる人の数は増えました。これがセカンドシーズンの大きな変化です。

シフトを担当するのが新理事の梶田さんです。梶田さんが大切にしているのは「関係性をつくること」。キッチンメンバー同士が顔を合わせるために、たこ焼き会を開くこともあります。コミュニケーションを取る時間を設けることで、ただ「働く」だけじゃない時間をつくることができるからです。

キッチンの電子レンジが壊れた時に「カンパをお願いします!」と呼びかけると、想定していた金額が早い段階で集まったそうです。「この場所を残したい」と思っているのは、運営する人だけではないのです。
2025年には、年間6,000円の賛助会員制度もスタートしました。

セカンドシーズンになって、運営方法や組織の形は変わりました。けれど、根底にある思いは、ファーストシーズンから変わっていません。
目指しているのは、「居心地の良い場を、自分たちでつくれる社会」。
誰かに用意してもらった場所を利用するだけではなく、自分もその場所をつくる一人になる。
結caféでは、そんな関わり方が育まれています。

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現体制は代表理事の丸山憲夫さん、理事の平野みきさん、佐藤美由紀さん、梶田幸子さんの4人。横浜コミュニティカフェネットワークの米田佐知子さんと一緒に。

5)「保護者が市民になっていく」

最近、さまざまな場所で、地域の担い手不足が深刻です。共働き世帯が増え、昼間に地域で過ごす人が減る一方、無償の地域活動への関わり方も多様化しています。

そんな中、結caféには、ボランティアやイベント運営の人材が集まっています。
たくさんのコミュニティカフェを知る米田佐知子さんは、この場所を考える上で、洋光台という地域そのものにも注目していました。
米田さんが特徴として挙げたのが、地域の幼稚園などを通じて生まれる人のつながりです。子育てやPTAを通じて地域へ目が向き、「自分たちの地域でも何かやってみよう」と活動が広がっていく。米田さんはそれを、「保護者が市民に育っていくつながり」と表現しました。 キャンドルナイトも、そんなつながりから生まれました。セカンドシーズンを受け継いだ40代で現役子育て中の梶田さんも、保護者活動の中から声をかけて結caféへのボランティアや協力者を得ています。「カフェが生まれる前から、PTAなどを通じて重層的な関係ができていて、カフェのお客さんの中にも運営側の目線を持っている人がいた」と米田さん。
そうした土壌がある洋光台という地域性が結caféを支える底力の一つなのかもしれません。
「新たな担い手が地域に育まれ途絶えないこと」と「時代に合わせて運営を変化させた柔軟性」が結caféの事業承継のポイントと言えそうです。

キャンドルナイトから始まり、PTAや地域活動を通して人のつながりが生まれ、その先にカフェができた結café。そして今、その場所を利用してきた人たちが、新しい担い手になっています。結caféのセカンドシーズンは、まだ途中です。けれど、同じ形を守るのではなく、関わる人に合わせて形を変えながら、まちの中に居場所を残していく。そこに、地域の活動を次の人へ手渡していく一つのヒントがありそうです。

6)もうひとつの場所へ 元住吉「TONARINO.」

神奈川県住宅供給公社の賃貸住宅にも個性の光るカフェがあります。
東急東横線 元住吉駅から徒歩約8分、神奈川県住宅供給公社の賃貸マンション「フロール元住吉」の1階にある「TONARINO. by SWITCH STAND(トナリノ バイ スイッチスタンド)」です。

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フロール元住吉の住民エントランスの横にカフェがある

フロール元住吉には、「守人(もりびと)」と呼ばれるコミュニティマネージャーが活動し、入居者同士のつながりを支えています(守人を担うのはHITOTOWA INC.)。TONARINO.を運営するのは「SWITCH STAND(株式会社Yuinchu)」。カフェの運営だけを専門とするのではなく、「場」のプロデュースカンパニーです。

「守人さんは住民の方のコミュニティに向けて動いていて、私たちはどちらかというと、建物と外の人とのつながりをつくるために、接点を増やしていくことをメインにやっています」とスタッフの森あすかさんは話します。カフェに来てもらうことで、「こういうマンションなんだ、こんな取り組みがあるんだ」と建物や暮らしを自然に知ってもらうきっかけをつくっています。

TONARINO.by SWITCH STANDのコンセプトのひとつが「衣・食・住」。マンション(住)の1階に、カフェ(食)と古着の販売スペース(衣)を一体で設けています。古着は2025年5月からスタートしたばかり。古着販売の事業を手掛ける辻 尭也さんが店舗に立ち、コーヒーを淹れながら服の販売も行っています。「カフェに興味がある人も、古着を見て気になって来てくれる人もいて、きっかけが増えました」と森さん。

カフェは着席で15席ほど。メニューは、ランチやスコーンやチョコレートクッキーなどのスイーツ、各種飲み物など。バスクチーズケーキが特に好評だといいます。

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ベーグルプレートとサラダのプレート、クリームチーズトッピング(1,090円)。ベーグルはイベント運営サポートで知り合った茅ヶ崎のパン屋から仕入れている


奥にあるレンタルルームでは、地域の人たちが、リトミック、英語教室、プログラミング、ベビーマッサージなどの教室を行っています。カフェスタッフが主催する月に一度のお菓子づくりワークショップは毎回定員超えの応募があり大盛況。これまでに桃のロールケーキやクッキー、ドーナツのデコレーションなどをテーマに開催。子どもたちが夢中になっている間、親御さんはカフェでゆっくり過ごし、自然と会話が生まれます。
守人とのコラボイベントも毎月1回のペースで開催。夏祭りでは住民が縁日を担い、カフェが食の提供を行うなど、入居者と地域の人が交わる場をつくっています。

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スタッフの森あすかさんと辻尭也さん

「無理やりつなぐというのではなく、ゆるやかにつながってもらうことをテーマにしています」と森さん。カフェに来て古着に出会う人、ワークショップをきっかけにカフェの常連になる人、小さなきっかけを積み重ねながら、この場所は続いています。

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取材に訪れたときは、ランチを食べる家族やドリンクを飲みながらパソコン作業をする方などが利用されていた。私たちの奥に見えるのが古着の販売スペース。

結café
場所:横浜市磯子区洋光台3-1-6 洋光台商事ビル1F(JR洋光台駅 徒歩約3分)
営業時間:月〜金 10:00〜16:00(L.O.15:30)
https://www.renet-yui.com/re-net-cafe

TONARINO. by SWITCH STAND
場所:川崎市中原区西加瀬5-1 フロール元住吉1階(元住吉駅 徒歩約8分)
営業時間:11:00〜17:00(月・火・祝日定休)
https://switch-stand.com/tonarino/



米田佐知子さん

子どもの未来サポートオフィス代表。横浜コミュニティカフェネットワーク(YCCN)副代表。関東学院大学非常勤講師(社会教育論ほか)。Facebookページ「コミュニティカフェFun」にてコミュニティカフェ訪問レポートを発信中。
横浜コミュニティカフェネットワーク(YCCN):https://yokohama-ccn.jimdofree.com/
コミュニティカフェFun(Facebook):https://www.facebook.com/communitycafeFun/



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