「探そう!コミュニティの芽」vol.8 〜コミュニティカフェって何だろう? 〜
コミュニティづくり2026.07.31
探そう!コミュニティの芽 vol.8 〜コミュニティカフェって何だろう? 〜
こんにちは。ライフデザインラボの船本由佳です。
このコーナー「探そう!コミュニティの芽」では、人と人とのつながりが育まれている現場や、その仕組み、キーパーソンなどを紹介しています。みなさんの生活や暮らし、コミュニティづくりのヒントになれば嬉しいです。
今回から2回にわたって「コミュニティカフェ」を取り上げます。横浜コミュニティカフェネットワーク(YCCN)副代表の米田佐知子さんに、コミュニティカフェとはどういう場所なのか、まちにあるとどんないいことがあるのかをお聞きしました。

米田佐知子さん。子育て支援、こども食堂、居場所づくり、国際理解などさまざまな「つながる現場」を見てきた米田さん。筆者船本の活動「話そう横浜での子育てワイワイ会議」のメンバーでもある。
1)米田さんがコミュニティカフェと出会うまで
米田さんは、子どもや子育て支援に取り組む団体や地域の人たちをつなぎ、活動を支える「子どもの未来サポートオフィス」を立ち上げ、子育て支援、若者支援、居場所づくりに長年関わってきました。現在は横浜コミュニティカフェネットワーク(YCCN)の副代表も務め、関東学院大学の非常勤講師として社会教育論などの講義も担当しています。
コミュニティカフェとの出会いは、自身の子育て経験がきっかけでした。子育てに悩み、子育て環境を考える団体を地域で立ち上げた米田さんでしたが、活動する中で「子育て中の人たちが集まっても、そのコミュニティの中だけで完結してしまうと、親子が社会の中で孤立していることに変わりないんじゃないか」と感じたそうです。
子どもをいろんな人から見守ってもらうためには、多様な人と関わる場が必要です。自然にいろんな立場の人と関われる場があれば良いと考えました。
もうひとつの課題は、市民活動で利用できる場所の少なさでした。米田さんが子育てしていた20年ほど前は、今でいう市民活動支援センターなどが十分に整備されておらず、活動を立ち上げてもやりたいことを応援してくれる機能や場が身近にありませんでした。そんな思いを語り合っていたまちづくりネットワークの仲間が、横浜でのコミュニティカフェの先駆け的な存在である「港南台タウンカフェ」をオープンし、米田さんも参加する中で、YCCN立ち上げへとつながっていきました。

横浜コミュニティカフェネットワーク(YCCN)は2014年に設立された、横浜市内のコミュニティカフェ運営者や実践者によるネットワーク。運営者同士が学び合い、支え合いながら、コミュニティカフェの価値や可能性を発信。交流会やフォーラムなども開催している。(写真提供 大倉山ミエル)
2)コミュニティカフェとはどういう場所か
「コミュニティカフェ」という言葉、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、いったいどんなカフェなのでしょう。
米田さんは次のように説明してくれました。
「居場所、たまり場、サロン、えんがわなど、呼び方も形もさまざまで、実は明確な定義はありません。定義に『ゆらぎ』があること自体が価値だと思っています」
YCCNでは実践的な基準として、コミュニティカフェを次の3つの要件を満たす場と整理しています。
- 目的なく、誰でも利用できる
- 飲食や物販、スペース貸しなど金銭のやりとりが可能である
- 地域と社会につながる機会が用意されている
誰もが気軽に利用でき、地域の生きた情報が集まり、自然につながれる強みがある、そんな場所がコミュニティカフェです。
定期的に開催するものもあれば、不定期のものもありますが、その形態は実に多様です。
- 公民館などを利用して開催するもの(公共施設利用型)
- 専用の拠点を設けるもの(地域交流拠点型)
- 自宅を開放する「住み開き」(自宅開放型)
- 店舗として営業するもの(店舗営業型)
- そのほか
などの形態があると米田さんはみています。
また、それぞれの主体が福祉系だったり、事業系だったりといった違いもあります。
テーマがあるコミュニティカフェもあり、子育て、高齢者支援、ジェンダー、障がい・就労支援、まちづくりなど様々です。
一般のカフェでも、人と人、人と地域・社会が出会いつながる仕掛けがある場所はコミュニティカフェだと米田さんは考えているそうです。形態よりも、出会いやつながりが起きているかどうかが大事だといえます。

こまちカフェ(横浜市戸塚区)。子育て支援とまちづくりを活動の軸としている認定NPO法人こまちプラスが運営。カフェ空間の一角には木でできた子どもの遊び場も。野菜をふんだんに使ったアレルギー対応の食事が人気。11時から14時がランチタイム、14時からカフェタイム、16時から地域の大人と子どもが学び合う「こどもとおとなの学校」(写真提供こまちカフェ)

街カフェ大倉山ミエル(横浜市港北区)。乳幼児親子の自主保育の会「みつばち探検隊」夕方の小学生の居場所「放課後ミエル」フリースクール「ミエルの里」シニアの集う「おでかけミエル」「ブックカフェ」「音楽カフェ」「地元野菜のワンデイカフェ」など、多世代が集う地域の居場所。(写真提供 大倉山ミエル)

シェアリーカフェ(横浜市都筑区)は、カフェというよりは「地域の活動拠点」。子どもの居場所や高齢者の交流、地域住民による講座など、多様な活動が日常的に行われている。写真は横浜市のサービスB 通所型支援事業<スローカフェ都筑>の水曜日の<おしゃべり&スマホ相談>の日の様子(写真提供 シェアリーカフェ)
3)コミュニティカフェがまちにあるといいこと
では、コミュニティカフェがまちにあると、何がいいのでしょうか。
米田さんは「今の時代は、人と人の関係が薄くなってきている」と話します。強い結びつきの縁でもなく、表面的なつながりでもなく、ゆるやかに気にかけ合える関係。そういった関係が成り立つ場が、現代では失われつつあります。
「大きなコミュニティや強い絆とまではいかない、できるときに参加して、できないときは参加しなくてもいい。ゆるやかにつながることができるのが、コミュニティカフェのいいところ」
と米田さん。
居場所で起こる変化は、段階的に積み重なっていきます。まず、繰り返し通って顔を覚えてもらうと声をかけてもらえる。「自分がここにいる」ことを知ってくれている人がいる。それだけで安心感を得ることができます。
さらに、「活動する・役割を担う」段階になると変化はより大きくなります。イベントを手伝ったり、気づいたことを持ち込んだりするうちに、所属感が生まれ、「自分には役割があって、役に立てることがある」という実感が育まれる。「その人が持っているものが引き出されて、エンパワメントされる」と米田さんは言います。
そしてコミュニティカフェには、「孵化装置」としての機能もあります。多様な人が集まる場には、地域のニーズと資源が自然と持ち込まれます。
「こんなことで困っているんですが」
「こんなことをやってみたいんです」
そういった声をカフェがつなぎ合わせることで、新しい活動が生まれていく。コミュニティカフェを核に、まちに新しい「コミュニティの芽」が育っていくのです。

こよりどうカフェ(横浜市戸塚区)。2022年にライフデザインラボのメンバーで戸塚区のこよりどうカフェを訪れた。ここは子育て支援で知られる「こまちカフェ」に続く2つ目の拠点として善了寺の境内に誕生したコミュニティカフェ。「まちの小さなヨリドコロ」をコンセプトに、誰もが気軽に立ち寄れる居場所であるとともに、人と人、人と地域をつなぐ拠点を目指している。
4)始めてみたいと思ったら
地域で「コミュニティカフェをやってみたい」という方への米田さんのメッセージは、「気負わず、小さく始める」です。
「人が集まる場に、それぞれが持ち寄るもので化学反応が起こるのを味わっていく。そういうものなんですよ。年季の入ったコミュニティカフェを見て、ああなりたい、と焦る必要はありません。何年もの積み重ねがあって今の姿があるのであって、最初から同じにはなれない。大切なのは、『そこに来た人たちに合わせて何をやっていくかが決まっていく』という感覚を持って、委ねていくことです。」
「まずは、気になるコミュニティカフェを訪ねてみることも勧めています。自分の中だけで考えず、実際に足を運んでヒントを盗む。コミュニティカフェはビジョン通りに歩むというよりも、来る人と一緒につくっていく場なので。」
と米田さんは話します。
YCCNは、カフェ実践者だけでなく、コミュニティカフェに関心のある個人も参加できるネットワークです。
またFacebookページ「コミュニティカフェFun」では、米田さんが自ら訪ねた全国91か所のカフェのレポートを読むことができます。興味が湧いたら、まずは覗いてみてください。
5)新規オープン!乾杯コーヒー
神奈川県住宅供給公社が開発した相武台団地(相模原市南区)内にも今年、新しいコミュニティカフェがオープンしました。
多世代交流拠点「ユソーレ相武台」にある、その名も「乾杯コーヒー」です。
「ユソーレ相武台」は、2019年に団地と地域の方々の交流拠点として公社が整備し、オープンしました。公社グループのシニアライフ振興財団が運営を行ってきましたが、2026年1月からは相武台団地商店街で認知症対応型デイサービス「おとなり」を営んでいた株式会社ファイブスターが運営を引き継ぎ、音楽デイサービスやカフェ事業を展開しています。この取り組みの中で特徴的なのが『乾杯コーヒー』です。
乾杯コーヒーは生演奏やデイサービスが行われる同じ空間のカウンター内で提供される喫茶店。介護福祉士や栄養管理士の資格を持つスタッフがカウンターに立つこともあり、気軽に健康相談もできます。
一杯のコーヒーをもって「乾杯」と声を掛け合うことで、初めて会う人同士でも自然と会話が生まれるようにという思いがあるそうです。
コーヒーを飲むことだけが目的ではなく、人と人がゆるやかにつながり、地域との接点が生まれる場。これからどのような人が集まり、何が生まれてくるのか、注目していきたいと思います。
株式会社ファイブスターの代表で理学療法士でもある安西さんが開会式で挨拶。「みんなで乾杯!」の掛け声でイベントがスタートしました
次回は、米田さんと一緒に「結カフェ」を実際に訪ねます。2017年に発足した結カフェは、2024年に運営メンバーが「代替わり」をしました。事業の継承に悩む活動が多い中、「セカンドシーズン」進行中の結カフェでは、どんなお話が聞けるのでしょうか
また、神奈川県住宅供給公社の「フロール元住吉」に併設されているカフェ「tonarino,」についてもリポートします。
お楽しみに!
米田佐知子さん
子どもの未来サポートオフィス代表。横浜コミュニティカフェネットワーク(YCCN)副代表。関東学院大学非常勤講師(社会教育論ほか)。Facebookページ「コミュニティカフェFun」にてコミュニティカフェ訪問レポートを発信中。
横浜コミュニティカフェネットワーク(YCCN):https://yokohama-ccn.jimdofree.com/
コミュニティカフェFun(Facebook):https://www.facebook.com/communitycafeFun/
ライフデザインラボの活動はライフデザインラボWEBサイトへ
これまでの「探そう!コミュニティの芽」は下記リンクへ



