新企画!「探そう!コミュニティの芽」vol.1

コミュニティづくり2025.05.27広報担当

こんにちは。ライフデザインラボの船本由佳です。

住み続けたいまちをつくるには、安心できる安全な住居に加えて、近所の人と助け合うコミュニティも大切な要素です。ただ、コミュニティは一人ではつくることができませんよね。「地域につながりをつくりたいけれどうまくいかない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
新企画「探そう!コミュニティの芽」ではコミュニティが育まれている現場や 、その仕組み、 キーパーソンを紹介していきます。みなさんの生活や暮らし、コミュニティづくりのヒントになれば嬉しいです。
1回目の記事では、これを書いているライフデザインラボ所長、船本由佳について、2回目の記事でライフデザインラボについて、紹介させていただきます。

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かつて公社ビル1階にあったライフデザインラボの入口で2018年撮影

1 自己紹介をします

私は大阪出身、横浜在住17年。小学生の女の子と中学生の男の子と夫の4人暮らしです。大学卒業後、放送局でアナウンサーとして勤務していました。今はフリーキャスターとして、ラジオ番組のパーソナリティや式典などの司会を務めるほか、ワークショップデザイナーとして活動しています。放送局に勤めていた経験からメディアリテラシー教育や市民ライター講座、NPO、社会活動団体向けの情報発信研修などにライフワークとして取り組んでいます。また、子育て当事者として「話そう横浜での子育て ワイワイ会議」の共同代表を務めており、市民目線で子育て環境の改善に向き合っています。
2018年からはライフデザインラボの所長として、また神奈川県住宅供給公社の団地共生プロデューサーの一人として活動しています。

ライフデザインラボ

船本由佳HP

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子育てをしながら再度大学に通い、ワークショップデザイナーの資格を取りました

2 原点は「ままならない子育て」

私の転換点は子どもを産んだことでした。出産前までは自分が思うように仕事をしたり、人と会ったりする生活をしていました。しかし、子育てが始まるとそうはいきません。
子どもに合わせた生活になり、自分の時間どころか家事をする時間さえ十分に取れない生活。慣れない子育てに寝不足になり、簡単に外出することもできず、社会から取り残された気持ちになりました。
毎日が途切れ途切れの時間になり、もちろん仕事をすることもできないので、お金も自由にはなりません。
バスや電車に乗るのにも子供のことが気がかりで簡単ではありません。
子育てには正解がなく、どこまでやれば終わりなのかがわからず、精神的にも参ってしまいました。
日中は話し相手もおらず、もう社会には戻れないのでは?と不安にも駆られました。

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生まれたての妹を抱く当時1歳の息子。写真では微笑ましいけれど、親はヒヤヒヤ。自分では動けない赤ちゃんとよちよち歩きの幼児との生活は「危ない」の連続だった。

そんななか、地域の地区センターの「何かやってみたい人募集」という呼びかけにより集まった0歳児子育て中の女性たち10人が集まり、「まま力の会」という会を始めることになりました。子育て中の時間を生かしたい、家庭にいても社会とつながりたい、子育てしやすい地域を作りたいと発足した横浜に住む母親グループです。

子連れでも入りやすいお店や授乳室やおむつ替えの場所の情報を調べるために、ベビーカーで「まちあるき」をしてマップを作ったり、家で一人だと作りきれないおせち料理を会のメンバーで分担してシェアする「おせちシェア」など、自分たちが必要だと思った活動に取り組んでいきました。
思えば今大切にしている「個人の小さな困りごとの解決は、まち全体の暮らしやすさにつながっていく」という実感はこの時に覚えたのだと思います。

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ベビーカーを押しながら子連れに優しいスポットをリサーチする「まちあるき」


ヨコハマ経済新聞 2013.08.28
子育て支援グループ「まま力の会」が初イベント-本牧地区センターでヨガ講座など

なかでも、象の鼻テラスと一緒に開催したゾウノマママルシェは子ども服の地域循環とつながりづくりを目指して開催して、来場者からも多くの好評の声をいただきました。

神奈川新聞 2016.10.20
子ども服を地域で循環 横浜・象の鼻でマママルシェ大盛況

ヨコハマ経済新聞 2016.10.18
象の鼻テラスで子ども服を循環させる「ゾウノマママルシェ」 リメイク体験コーナーも

このイベントは施設全体で1日で1000人以上の来場がありました。しかし、スタッフ全員が子どもを連れながら運営できる規模を超えてしまい、子育て当事者だけで活動することに限界を感じてきました。「子育ては自己責任」といわれ、他者に助けを求めること自体に壁を感じていたわたしたちでしたが、勇気を出して多くの方に協力していただいたことをきっかけに子育て世代の状況を知ってもらうことにつながりました。子育てに優しいまちづくりは子育て当事者だけで取り組んでいても進まないのだということを実感しました。
そこで当時、関内イノベーションイニシアティブ株式会社が運営していたソーシャルビジネスの起業スクール(ソーシャルビジネススタートアッププログラム2015年)とボランタリー団体の成長支援研修(ボランタリーエースプログラム2017年)を受講し、社会活動として持続していくための組織の見直しや強みの分析、5ヵ年計画などに取り組み、支援を呼びかけた先に自分たちが地域に何を還元していけるのかを考えるようになりました。

kiiのソーシャルビジネススタートアップ講座

「かながわボランタリーエースプログラム2017」成果報告会 posted:2018.2.6

また「まま力の会」の活動と並行して、「子育て情報紙ベイ★キッズ」やWEBメディア「森ノオト」に参画しはじめました。2016年には当時アメリカで移住したいまちナンバーワンだったポートランドに子連れで視察に行き、自分たちのまちでも、市民力を高め、環境の面から持続可能な地域社会について考え、自分のまちが「住み続けたいまち」であるためにはどうなると良いのかを考えました。

森ノオト ポートランド記事シリーズ

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ポートランドでは文具やペーパー類のリサイクル活動を行うNPOや建築資材の循環を推進するリビルディングセンターを見学。農園内で実施された子どもの自然教育プログラムを体験し、まちづくり活動「シティリペア」に参加した。

3 公社とのかかわり

神奈川県住宅供給公社と出会ったきっかけはミシンでした。幼稚園や保育園に入園する際、上履き入れやシーツなどを所定のサイズで手作りしなければならない園が多いことから、まま力の会では「入園グッズを作る会」というミシンのイベントを実施していました。地域の方から寄贈していただいたミシンを保管していた場所が使えなくなることがわかり、活動継続に向けて情報を集めていた時に相談に乗ってくださったのが神奈川県住宅供給公社でした。そのころ、ちょうど公社本社の一階を改修する計画が進んでおり、リニューアルした際にはより市民に開かれた場所になるようにと社内でアイディアが求められていました。そのときの公社の理事長さんから「これからの地域社会には女性の活躍が不可欠で、女性の力を生かすことが今後の社会の活性化につながる」と言っていただきました。今までの実績も評価していただき、公社の団地共生プロデューサーとして活動することになりました。2017年のことでした。時はまだコロナの前ではありましたが、働き方や家庭のあり方が転換していく予兆がありました。

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ミシンを使うワークショップは多世代にニーズがあり、交流のもとになった


周りを見てみると、社会には子育て当事者だけではなく、制限を受けながら暮らしている人が多いことに気がつきました。介護や障がい、異動、転勤、言語の違い、メンタルの不調など、制約にもさまざまなものがあり、フルパワーで能力を発揮できない人、他者の手助けなしでは暮らすことができない状況の人が多くいると気づき、この活動はわたしたち子育て世代だけの未来を明るくするものでは無いのだと感じました。

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リサイクルと手作り品のマルシェは定番イベントとなった

「まま力の会」の名前のまま活動をすると、ママではない人が参加しづらいという声があり、実際に壁を感じていました。公社で新たに行う活動の名前には「ママ」とか「キッズ」とか、子育てを感じさせる言葉を入れるのはやめたいと思いました。
まちに必要なのは、居場所のない子育て世代が社会と出会う場所。さらに、子育て世代だけでなく、多様な人たちが、自分と違う状況の人と出会える場所になればいいと思いました。
神奈川県住宅供給公社の団地を見学した時、居住者が占有する居住スペース以外に緑地や集会所など共有部が多く、そこが団地の価値の一つなのだと教わりました。
自然と集まれて井戸端会議ができる場所。そんな場所が都会にあれば、コミュニティの良さを伝える発信拠点となるのではないか。
そこで、公社1階の一角をコミュニティスペースとして「ライフデザインラボ」と名前をつけ、居場所から始まる社会実験をはじめることになりました。
安心して立ち寄れる居場所をつくり、自分たちのコミュニティづくりの実践をもって、経験を蓄積し、その活動を横展開をさせていくことを目標とし、つながりづくりの実験室として、2018年3月にライフデザインラボはスタートしました。

次の「探そう!コミュニティの芽」ではライフデザインラボの活動について紹介します。

神奈川県住宅供給公社 団地共生プロデューサーとは・・・
公社業務では持ちえない特定の知識・経験・ノウハウを持つ社外専門家。公社から委嘱を受け、公社が行う団地と地域の共生の取り組みにおいて、指導や助言、援助を行う。公社の使命である団地居住者等が安心感と生きがいをもって共に生活し、地域の社会・経済・環境と共生できる団地づくりに取り組み、これを広く社会へ発信していくために協力する。

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