• TOP
  • ブログ
  • with Public
  • 団地で暮らし、つながり、成長する【竹山団地×神奈川大学サッカー部】~Kosha33トークセッション「with Public│団地と大学」のスピンオフ企画として「団地ツアー」~

 

団地で暮らし、つながり、成長する【竹山団地×神奈川大学サッカー部】~Kosha33トークセッション「with Public│団地と大学」のスピンオフ企画として「団地ツアー」~

with Public2026.09.29広報担当

7月上旬、Kosha33トークセッション「with Public│団地と大学」のスピンオフ企画として「団地ツアー」を開催しました。今回は、「竹山団地×神奈川大学」のツアーをレポートします。
2020年3月に神奈川県住宅供給公社(以下、公社)と神奈川大学が連携協定を締結し、サッカー部員が地域活動への参画とサッカースキルを含む"人間力向上"の両立に取り組む「竹山団地プロジェクト」がスタートしました。

竹山1i.jpg

ツアー参加者へ竹山団地の説明をする神奈川大学サッカー部監督の大森監督

1 地域で暮らす学生たち

サッカー部の部員62名が、竹山団地の「住民」として地域で暮らしています。学生が団地に住むことで、地域活動の時間だけでなく、日常生活そのものが地域との接点になっています。他の住民と顔を合わせた際に挨拶をするなど、日々の暮らしの中で自然と地域の方と関わる機会が生まれています。学生にとっても、地域活動に参加するために地域へ出向くのではなく、地域の中で暮らすことそのものが、住民との関係をつくるきっかけになっています。

竹山団地はほとんどの棟にエレベーターがありません。高齢化が進む中、公社賃貸住宅の上層階にも空き住戸がありました。

そこに、学生が地域の中で暮らし、地域との接点を持つことが、団地にとっても学生にとっても新たな可能性になると考えられ、「教育」×「団地」という取り組みとしてサッカー部員が暮らし始めることになりました。

そのため、学生と地域の関係は、「学生が地域に貢献する」という一方向のものではありません。学生自身も、地域の中で住民と関係をつくりながら暮らし、多世代交流や健康づくりなど様々な場面に関わっています。毎年、入学や卒業といった入れ替りを経て、常時60名規模の学生が各々、住民と日々の暮らしや活動を通して関係を築いています。

同じ団地で暮らしていても、地域との関わり方はそれぞれで、60人の学生がいれば、地域との関わり方も60通り。それぞれの日常の中で地域、住民とのつながりが育まれています。こうした変化は、空住戸に学生が入るという「空間」の変化だけではなく、そこに暮らす人が増えたことで、顔を合わせる、声をかける、話をする、活動をともにするといった、人と人との関係そのものが増えています。

竹山団地を担当する職員によると、この取り組みには同じ居室で暮らす「上級生×下級生」のような、小さな掛け算が沢山あるそうです。目指しているのは、施設を整備するだけではなく、「人×人の関係性をデザインする」こと。

学生同士、学生と住民、さまざまな人が暮らしの中で出会い、関わることで、新たなつながりが生まれていく。

竹山団地では、こうした人と人との関係そのものを、団地の価値の一つとして捉えているそうです。

そして、この取り組みの背景には、神奈川大学サッカー部の大森監督の「サッカーの技術だけでなく、共同生活や地域貢献を通じて、学生の人間性を育てたい」という思いがあります。大森監督には、「未来社会の主役となる学生に、どのような学びの環境を提供できるか」という視点があり、サッカーだけでなく、人との関わりを通して社会性や人間性を育てることを目指しているそうです。

学生が団地で暮らすことは、地域に学生という新たな住民を増やすだけではありません。日常の中で人と人が出会う機会を増やし、そこから生まれる関係を、学生にとっても地域にとっても学びや変化につなげていく。竹山団地で始まった取り組みには、そんな「暮らすこと」から始まる地域との関わりがあります。

竹山中央3103.jpg

竹山団地を象徴する人工池を臨む竹山団地3103号棟の1階に健康促進・生活習慣改善・コミュニティの場となる竹山セントラルがある

2 暮らしていく中で地域に生まれた生活に根差した取り組みと繋がり

健康づくりを支える活動

竹山団地では、同区内の平均と比べて高齢化が進み、健康状態にも課題が見られました。そこで、横浜市の介護予防事業を受託し、竹山セントラルでは健康体操教室を開催しています。見学した日は、約35名が参加しており、90歳以上の参加者もいるそうです!

健康体操教室では、体を動かすだけでなく、栄養・食事・睡眠・熱中症など日々の健康に関する情報も発信しています。冗談を交えながら、楽しく体を動かしたり、頭で考えながら体を動かす脳トレを取り入れたりと、楽しみながら健康づくりに取り組める工夫もされています。

参加者からは体調の改善を実感する声に加え、血糖値などの数値にも変化が見られているそうです。参加者同士が笑顔で会話を交わし、一緒に体を動かすことで、自然と交流が生まれています。

竹山体操教室3.jpg

竹山①i.jpg

教室に通っている皆さんのようにはなかなか動けず、一緒に参加した先輩職員2人と苦闘

健康体操教室はツアー参加者も一緒に体験させていただきました!実際に体を動かしてみると、講師の指示通りに動くのは難しく、思ったより苦闘しました。

実際に健康体操教室に参加している方にお話を伺いました。

80代後半の女性は、教室が始まる10時の時点ですでに7,000歩以上も歩いているのだと、スマホの万歩計アプリを見せてくださいました。1日の終わりには、1万歩を達成するのだそうです...!

「家に引っ込んでいると歩かないから、外に出てくるの」

そう話す女性は、朝に小学生の登校を見守りながら、竹山団地内をぐるっと散歩するのが日課で、健康体操にも継続して参加し、お昼には体操教室に参加している仲間と、竹山キッチンで食事をするのが決まりだそうです。

そして、もう一つ印象に残ったのが、神奈川大学サッカー部との関わりでした。

神奈川大学のサッカー部を応援しており、OB戦があった際には推しの選手同士が対決することになったそうです。「どちらを応援しようか」と楽しみながら観戦したというお話も聞かせてくださいました。写真を見せながら楽しそうに話す姿からは、学生が「地域活動をしている大学生」というだけではなく、地域の方にとって、応援したくなる身近な存在になっていることが伝わってきました!

このお話から見えてきたのは、健康づくりが「体操をする」という一つの活動だけで完結していないということでした。

健康のために外へ出る。外で出ることで人に会う。健康体操教室で体を動かし仲間と食事をする。一つひとつの行動がつながり、日々の暮らしの中に自然な循環が生まれています。
その循環を支える取り組みの一つが、食を通じた交流です。健康体操後には、バランスのとれた食事を提供する「竹山キッチン」を利用する方も多く、水・金曜日にはカレーを提供するカフェも営業しています。

竹山7i.jpg

体操、食事が一体となることで、健康づくりの場が、そのまま地域住民のコミュニケーションの場にもなっています。

見学した際に、サッカー部で作った野菜を使用したランチをいただきました!スパイスの香りがほどよく感じられ、体が内側から温まるような味わいでした。とても美味しく、スパイス料理に興味を持ちました!

竹山ランチi.jpg

ランチ600円 ターメリックは認知症の予防にもなるのだとか

また、農地を借りて野菜を育てる「部産部消」(by大森監督)の取り組みもあります。育てた野菜は、健康体操教室後の参加者へ販売したり、教室終了後のランチに使用したりしています。

竹山②.JPG
竹山3.JPG

サッカー部が育てた野菜は健康体操教室の会場でも販売していました

さらに、横浜市のICTの取り組みも受託し、高齢者を対象としたスマホ教室を実施しています。その効果もあり、健康体操教室などの予約を高齢者自身がスマートフォンで行えるようになっているそうです。QRコードによる入館管理を通じて、運動量や参加頻度を把握し、未病対策にも活用しています。

健康体操、食、農業、ICT、そして学生との交流。一見別々に見える取り組みも、実際にはそれぞれがつながっています。

こうした一つひとつの繋がりが、団地を支える力となり、住民が健康に暮らし続けられる環境をつくっていきます。

そして、そのつながりを生み出す場には、地域で暮らす学生たちが関わっています。

3 「地域のため」が、学生自身の学びになる

学生は、健康体操教室やスマホ教室、竹山キッチンなどの運営や会計管理に、アルバイトとして参加しています。学生が地域の活動を支えることは、住民にとって活動を続けるための新たな力となる一方で、学生にとっては地域の方と直接関わりながら学ぶ機会にもなっています。

たとえば、健康体操教室では学生が講師として体操のプログラムを担当しています。そこでは、「間違えてもいいので挑戦してください」という姿勢で、学生自身も「どう伝えれば分かりやすいか」「どうすれば楽しんでもらえるか」を考えながら活動しているそうです。

ある学生は、頭で考えたことを体に実行させるトレーニングを1か月続けました。最初は、なかなか動きに移せない参加者も多かったようですが、今では完璧に出来るようになったといいます。

「レッスンを受けている方々の成長を感じられて、嬉しかった」

そう話す学生からは、自分が考えて取り組んだことが、目の前の誰かの変化につながっていることへの喜びが伝わってきました。

さらに、参加者から「体の調子が良くなった」という声が聞かれ、数値としても変化が表れていることで、自分たちの活動が地域の方に良い影響を与えていることを実感し、やりがいにもつながっているそうです。

竹山体操教室4i.jpg

竹山キッチンの運営に携わる学生も、活動を通して意識が変わったといいます。

「目の前の仕事をするだけでは運営は回らない」

「お客さんのために何ができるか」

と考えるようになったそうです。

こうした活動には、部員同士で協力しながら取り組んでいます。地域の方と関わる中で相手を思いやること、仲間と協力すること、任された役割に責任を持つこと。

日々の経験の一つひとつが、学生たちの社会性や人間性を育てています。

そして、学生たちは地域での活動が、サッカーだけでなく、これからの人生にも生きていると感じているそうです。

竹山5i.jpg

監督は、「この生活、活動を通じて、人としての盛るべき器を大きくしていこう」と話します。普段は関わる機会の少ない世代と接し、竹山団地で過ごす4年間の中で、人との交流を通じて社会性を身につけてほしい。まずは、ピッチで輝ける選手に、ひいては、様々な課題の中でも社会で活躍できる人間に育ってほしいという思いがあります。また、家族以外の人から必要とされ、「ありがとう」と言ってもらえる経験は、大きな価値があるといいます。自分たちの活動が誰かの役に立っていることを実感することが、学生自身の成長や自信にもつながっているのかもしれません。

4 循環する関係

一般的に、学生が社会との接点を持つ機会といえば、アルバイトなど大学や住処とは別の場所での経験が思い浮かびます。一方、竹山団地に暮らす学生たちは、暮らしている団地そのものが社会と関わり学ぶ場所になっています。

高校時代から寮生活をしていたという学生は、竹山団地での生活で変わったのは家族世帯や高齢者など、これまでとは異なる世代の人と隣り合って暮らすようになったことだといいます。

地域の方との交流が増える中で、周囲への気配りや住み方を意識するようになり、「どうコミュニケーションを取るか」も自分たちで考え、部内へ共有、発信をしているのだそうです。

また、今回の見学でも竹山キッチンでアルバイト中の学生が、団地での取り組みについて自分の言葉でしっかりと話す姿が印象に残りました。

地域で暮らし、地域の方と関わりながら過ごす時間は、目に見える成果だけではなく、学生自身の変化にもつながっているのだと感じました。

学生たちが地域で暮らすことは、住民との交流を生むだけではありません。

学生自身が地域の一員として周囲に気を配り、地域の方と関わりながら学んでいく。

その経験を仲間と共有し、今度はチームの中で生かしていく。地域との関わりと競技が別々にあるのではなく、日々の暮らしや活動で得た経験が、学生自身の成長、そしてチームの成長にもつながっています。

そして、その変化は地域にも返ってきています。継続的なデータ測定から、竹山セントラルの利用者数や商店街の往来が増えるなど、取り組みの効果も見えてきています。地域の方からは「学生が入って団地が良くなった」と感じてもらえるよう、日々の立ち振る舞いを大切にしているそうです。こうした積み重ねが、地域のぎわいや活気に繋がっています。

暮らしの中で生まれるひとつひとつの関わりが、人を育て、チームを育て、地域を変えていく。

住民の健康や地域の活気につながり、その一方で、学生自身も人との関わり方や社会性を身につけていく。そんな循環が、この取り組みの中には生まれています。

今回の団地ツアーを通して、団地という「暮らす場所」が、学生にとって地域を知り、人と関わり、学ぶ場所にもなっていることが印象に残りました。

活動の場だけでなく、日々の暮らしの中で顔を合わせ、言葉を交わす。そうした何気ない関わりが積み重なることで、学生にとっても地域にとっても、少しずつ変化が生まれているのだと感じました。

団地に暮らしながら学ぶからこそ生まれる、貴重な環境なのだと思います。

竹山_鴨.JPG

竹山野菜3i.jpg

大森監督から部で作った野菜をおすそ分けしていただきました!美味しかったです!

ブログ一覧に戻る