住まいとくらし~昭和から現在、そして「未来へ、これからも。」公社アーカイブ5年史、10年史
団地コラム2025.04.17
2025年9月15日、神奈川県住宅供給公社は創立75周年を迎えます。
神奈川県住宅供給公社の前身である「財団法人神奈川県住宅公社」が設立されたのは1950年(昭和25年)のこと。戦後の住宅不足の解消と都市の不燃化を進め、急増する県内人口に対応する大規模住宅団地の建設、先駆的なモデルとなる住宅供給など、常に時代の要請に対応した住まいとくらしを提供してきました。現在もコミュニティを醸成する住宅や、保有資産を活用した団地や周辺地域の活性化により、よりよい豊かな暮らしの提案をしています。
この75年を連載で公社の年史と共に振り返っていきます。
公社のこれまでの年史は公社のアーカイブ「年史」WEBページでご覧いただけます。
https://www.kanagawa-jk.or.jp/outline/archive/nenshi.html
神奈川県住宅公社5年のあゆみ(1955年9月)←クリックすると年史の電子ブックに飛びます
まずは、1955(昭和30)年発行の「神奈川県住宅公社5年のあゆみ」。
公社当初の5年間は戦後復興のさなかにあった神奈川で、特に横浜・川崎を中心とした住宅供給をしていました。
冒頭の会長(兼副知事)の挨拶によると当時の公社は、建設予定も含めると昭和30年の時点ですでに供給戸数は3,600戸に達していたようです。
当時の公社の役割も戦後の復興期のもので、「公社設立の二大目標である住宅難の緩和と、都市不燃化のために全力を注いで」とあります。
「住宅公社の沿革」では、全国で300万戸、県内で12万戸以上の住宅が不足しているとあります。設立当初の公社は主に賃貸住宅の供給を主に行っていましたが、1953(昭和28)年度からは産業労働者住宅(社宅)の供給を開始、また同年度から横浜市中心部である接収解除地復興の一助として、土地所有者と協力して建設した下層階が店舗、上層階に住宅がある「防火帯共同ビル」を手掛け、市街地の復興と住宅難の解消に貢献していました。
主にモノクロ写真ですが、昭和25年から30年に建てられた団地や社宅などが掲載されています。
昭和26年から28年度にかけて18棟264戸の大規模な団地もできています。
1953(昭和28)年竣工の産業労働者住宅「東芝小向住宅」(川崎市幸区)では「K52-R7」タイプが採用されました。
その後改良を経て長期にわたり建設され続けた初期の公社オリジナルプランの名作です。
住まいとくらし~住戸プラン②~の記事にも記載しましたが、この頃はまだ終戦から8年。テーブルと椅子で食事をするダイニングキッチン、内風呂といった戦後の新たな暮らし方を先取りした団地ライフは庶民のあこがれとなりました。
https://www.kosha33.com/life/danchi-column/post-140.php
神奈川県住宅公社10年の歩み(1960年9月)←クリックすると年史の電子ブックに飛びます
1960(昭和35)年発行の「神奈川県住宅公社10年の歩み」。この段階ですでに9,000戸を供給していたようで、5年目で3,600戸だったことを考えると、供給のペースが上がっています。
こちらの会長の挨拶では、「昨年度より計画いたしておりました磯子団地の造成も今や漸く緒につき近く着工の運びどなっておりますので、昭和39年度、これが完成の暁は約24万坪の丘陵地に3,500戸の不燃、中高層の住宅が林立し神奈川県における一偉観となると信ずるのであります。」と記載され、磯子団地(現在の汐見台団地)に期待を寄せていることがよくわかります。
10年のあゆみでは、関内の復興の様子がわかる写真が掲載されています。今ではドローンで比較的簡単に撮影できますが、当時、飛行機を飛ばして撮影した貴重な航空写真です。
一般賃貸及び分譲住宅:この頃の団地は2~4階建ての低層・中層住宅が中心です。戸建ては平屋も造っていました。
市街地共同ビル:米軍の接収解除により所有者に戻ってきた土地を活用して関内周辺に店舗併用住宅の共同ビルが数多くつくられています。
産業労働者住宅:いわゆる「社宅」と呼ばれる需要が多かったようです。
そして、肝いりの「磯子団地」開発計画も記載されています。
磯子近辺の埋め立てによる臨海工業地帯造成に伴う労働者等の住宅の建設事業で、人口計画では、14,400人を想定していたようです。
1955(昭和30)年と1960(昭和35)年の年史をご紹介しました。
まだ、戦後の復興が色濃く残る時代から「もはや戦後ではない」と言われた、高度経済成長初期。
木造から鉄筋コンクリートへと不燃化にこだわり、大量の住宅を造っていく日本の景色がここにあります。
次回は、「住まいとくらし ~楽しい暮らしを造る 神奈川県住宅公社創立15周年記念~」をご紹介します。