小田原の森へ!"木を学び、木に触れる" 地域密着プログラム「森林見学・木工体験ツアー」レポート

コミュニティづくり2025.12.09広報担当

11月15日(土)「小田原森林見学・体験ツアー」 〜木に触れ、学ぶ日〜を開催しました。
小田原の森林と木材の循環を、見て・学んで・触れていただくこのイベント。
お天気にも恵まれ、参加者のみなさまと一緒に、実りある1日を過ごすことができました。

いざ、いこいの森へ出発

朝9時、公共交通機関をご利用の参加者は小田原駅に集合。
送迎バスに乗り込み、いざ、小田原市いこいの森へ!

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小田原駅ロータリーでバスがお出迎え

お子さん連れのご家族や木材好きの大人の方、環境に関心のある学生さんなど、幅広い層の方々13名にご参加いただきました。
山道をバスで登る中、みなさんの期待がふくらむ様子が伝わってきます。
バスが到着したのは貯木場。貯木場とは、山から切り出した材木を一時的または長期的に保管するための場所です。
森林に囲まれた貯木場は森林の香りや風が心地よく自然を感じることができます。
まずは、公社職員より今回の開催について挨拶。公社の一部の賃貸住宅で、小田原産の杉を内装に活用している縁で、このツアーを開催することになりました。続けて、今回のイベントの企画や運営に協力していただいた、小田原地区木材業協同組合の下田理事長より挨拶。
そして、いよいよ森林教室からツアーがスタートします!

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いこいの森の隣にある貯木場。天気にも恵まれ、木の香りに包まれるスタート地点

森林教室:まずは"森を知る"ことから

まずは 森林教室 からスタートです。
ん?緑の帽子の人はだあれ?

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正体は、小田原市森林組合の職員の方。ここ、いこいの森で毎年秋に開催されるイベント「きまつり」で「村長」と呼ばれています。その村長がこのツアーにも来てくれました。蝶ネクタイに丸眼鏡、サスペンダーと、なんといっても緑の帽子がトレードマークです。
村長が「森林が果たす役割」「間伐の大切さ」「木材の循環」などを紙芝居を使ってわかりやすくレクチャーしてくれました。
日本の森は「天然林」と「人工林」の二つが存在します。人工林は人が一定間隔で苗を植え、手入れして育てる森。天然林とは違い、人が管理を怠ると育たず、荒れてしまうそうです。人工林を健全に育てるには間伐(木を間引く)などの手入れが欠かせません。間伐すると光が森の中に差し込み、下草が生え、残った木の幹が太く育ちます。降った雨は木の枝に落ち、下草に落ち、落ち葉の間を通ってようやく地面にたどり着くので、山が水を貯えるようになります。雨が降らなくても川の水がなくならないのは、山が水を貯めているから。

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間伐で木を切るのは「木を傷つける」のではなく、山と森を育てるために必要な作業。放置された山は、足元まで光が届かず草が生えない地面になります。降った雨により、表土が流れ出て木の根がむき出しになって土砂崩れが起きたり、降った雨がそのまま川に流れてしまうことにより洪水が起きやすくなったりします。
かつて日本では国産材が多く使われていましたが、貿易自由化により海外の丸太が安価に大量に入るようになり、結果として、国産材が売れにくくなり、日本の山の木が使われず放置される状況が生まれたとのこと。そのため林業従事者は収入が得られず、山に手を入れる人が減少。せっかく60年、70年かけて育てた木が売れたとしても、その跡地に再度植林して、下草の手入れをして、枝打ちをして、というコストが捻出できず、放置されてしまうことも。森林荒廃の一因にもなっているそうです。
「物を買う時に"木製品"を選ぶことで、日本の森を応援できる」と村長は熱く語ります。「木は金属やプラスチックなどの石油製品と違い、材料を手に入れるだけで50〜60年かかります。乾燥・製材など手間や時間がかかる素材ではありますが、時間をかけて育まれるからこそ価値があるのです」とも説明しました。

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クイズ形式の森林教室はみんなでワイワイ話しながら、考えながら、相談しながら受ける授業。参加者の皆さんが大きくうなずいたり、驚いたり。「今日の学びが、少しでも森林への興味につながりますように」と願う時間でした。

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森の案内人・村長が登場!子どもにも大人にも大人気!

伐採現場の見学:プロの仕事を間近で

森林教室のあとは、実際の伐採を見学すべく、現場へ移動します。その前に村長からツアー中の安全説明。
「ハチに遭遇することがあります。ハチは急に刺したりせず、様子を見に来ているだけ。落ち着いて動かず静かにしていれば離れていきます。一人がパニックになって、周りの人が刺されることもあります。そうならないよう、チームで支え合うこと」と注意が伝えられました。
では、いざ、伐採現場へ。
伐採の現場に着くまでは森林教室の現場編。森で育てる原木シイタケや、森林に生育する草花などについて、足を止めて村長が説明してくれます。

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伐採現場へ向かう道中は「村長」の森林ガイドツアーに


現場に着くと、林業従事者の方がすでに準備を整えて待ってくれていました。参加者の方にはヘルメットを装着していただき、安全を確保したうえで見学開始です。

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まずは、林業従事者の装備について説明。足元を守る防護ズボンや手袋、フェイスガード付きのヘルメットやゴーグル、騒音対策のイヤーマフ、チェーンソーや木を倒す方向を調整するくさびなど、普段はなかなか目にしないプロ仕様の道具に、参加者のみなさんの目が輝きます。

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林業従事者の装備を一つ一つ説明

続いて、実際の伐採方法をまずは村長が解説。
どの木をどう倒すかは、周囲の地形、木同士の位置関係を判断しながら作業します。一本の木を倒すにも、経験と技術が必要なのです。
木を倒したい方向に"受け口"をつくり、反対側から"追い口"を入れるという手順を、ジェスチャーを交え教えていただきました。

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まずは木を倒したい側からチェーンソーを入れて受け口をつくる

そしていよいよ伐採の瞬間。

チェーンソーがうなり、木くずが飛び散り、木がきしむ音が森の中に響きます。

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「パキッ......バサーーッ!!」
木が倒れた瞬間の地面の振動と空気の揺れを、参加者全員が全身で体感、自然と拍手が起きました。

村長は「伐採は森を壊すためではなく、森を育てるために必要な仕事です。間伐によって若い木が光を浴び、森が健康に保たれるんですよ」と、森を守る視点での伐採の必要性を改めて教えてくれました。

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木を切った切株。切りたてのヒノキの香りが漂います

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木を切った時に作った"受け口"部分

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実際に使用したチェーンソーを持たせていただきました 「重い!」

お昼休憩:森の中でリラックス

帰りの経路でも森林教室は続き、ところどころで足を止めながら貯木場に戻りました。さて、ランチタイムです。「好きな場所で自然を感じながら昼食にしましょう」
皆さん持参したお弁当を丸太の上や東屋などで自由に自然を感じながら食べていました。
外で食べるご飯は格別で「気持ちいいですね~」「空気が美味しい!」といった声があちこちから聞こえてきました。

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のんびりお弁当タイム。自然の中で味わうご飯は格別

製材所見学:木が"使われる姿"になるまでを学ぶ

昼食後は、貯木場の近くにある製材所へ。

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製材所見学は小田原地区木材協同組合の大山木材店さんの工場に伺いました

森で伐られた丸太が、どのように私たちの暮らしに使われる木材になっていくのかを学ぶ時間です。

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山から届いた丸太が製材機に設置されています。ここから加工が始まります

製材所につくと、木についての勉強です。木の種類、太さ、長さ、枝の付き方など、木材にとっての個性が価値や用途を左右することを教わりました。

製材機にかける前には丸太の掃除を行います。伐採時に地面に衝突した際に付いた砂や石、泥が刃を傷めるため、まず綺麗にするのです。この説明に、参加者の皆さんからは「そんな工程があるとは知らなかった!」と驚きの声があがりました。丸太は伐採時に付いた土や砂が刃を傷つけてしまうため、きれいにしてから切り始めるのだそうです。

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みんなで丸太をお掃除

そして、いよいよ製材機が動き出すと、参加者の視線は一斉に丸太へ。
帯鋸(おびのこ)が丸太に触れ、ゆっくりと切り進むと、倉庫いっぱいに木の香りが広がります。木肌が現れ、まっすぐな板材へと変わっていく様子は、見ているだけワクワクします。

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帯鋸を通過したところから木目があらわれます

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この木を活かすにはどのような材にすればよいか、木目を見ながら、丸太をあますことなく、熟練の目と技でうまく切り分けていきます

水分計は木材表面に軽く押し当てるだけで木の水分量が測定できます。切りたての木の水分量(含水率)は、一般的に100%から200%程度(含水率は木に含まれている水の重さの割合ではなく、木を完全に乾燥させたときの重さに対する水の重さのことなので、100%を超えることもあります)。樹種や部位によって大きく異なります

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乾燥中の木材。仕上げ材にするには15%または18%以下にします(JAS規格)。これらの基準を満たすために、伐採後の木材は天然乾燥や人工乾燥によって十分に乾燥させます

製材所のスタッフからは、
「製材を行うには、製材機械の維持、のこぎりの目立てなど刃物の研磨・交換、光熱費、従業員の人件費など多くのコストがかかります。事故に備えた保険料も少なくありません。最近はこれらの費用が上昇し、採算を取るのがさらに難しくなっています」
と現状の苦労話もしていただきました。
木を育て、伐り、運び、加工するすべての工程が持続できるよう、一本一本の丸太を無駄なく、丁寧に使い切ることが求められています。
森で見た伐採から、生活に使われる木材になるまでの流れがつながり、木の価値や手間、そして木材業への理解が深まる時間となりました。

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木工教室:自分の手で"木に触れる"時間

ツアーの締めくくりは、いこいの森の体験交流センター「きつつき」のデッキで木工教室です。
参加者のみなさんには、事前に選んだ「時計」「貯金箱」「小物入れ」づくりに挑戦していただきました。

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小田原や箱根で木材業を営む方々が木工教室の講師やスタッフです。丁寧なサポートがあるので初めての方でも安心して取り組めます。子どもたちが真剣な表情で釘を打つ姿、それをサポートする親御さんやスタッフ。みんなで組み立てます。大人も子ども黙々と思い思いの作品を作ります。
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真剣に木工に取り組む子どもたち。大人も夢中に。

解散、そして「また来たい」の声!

15時にすべてのプログラムが終了。
公共交通機関の方はバスで小田原駅へお送りし、解散しました。
「とても勉強になりました」
「子どもがまた木工したいと言っています」
「木のことをもっと知りたくなりました」
など、ありがたい感想をたくさんいただき、スタッフ一同とても励まされました。

「小田原森林見学・体験ツアー」 〜木に触れ、学ぶ日〜を終えて

このツアーは、10月に開催したKosha33トークセッションwithパブリック「木材と暮らし」のスピンオフ企画。トークセッションだけは伝わらない、実際に、木の生まれる場所を知り、木が使われる現場を見て、実際に触れる体験を通して、木の魅力をより深く実感していただきたいという想いから生まれました。

参加者のアンケートでは

「森についてのお話、散策、伐採、製材、製作をひとつのストーリーとして感じられてとても良いツアーでした。」

「大変、良いイベントでした(おすすめ度120%)」

「開催者側のメンバー皆さんが、とても熱心にご説明や実演をしていただき、とても感動しました!!」

など楽しんでいただけたようです。

また、

「私たちが木を使って暮らしていけるのは、林業や製材業の方が、リスクの高いハードな仕事も引き受けてくださっているからなのだと感じました。森を守ってくださってありがとうございます。」

「日頃の頑張りやご苦労を知ることが出来て有意義な時間でした、自分で出来ることは何かな?と考えるきっかけになりました。」

「各位が使命感に誇りをもって携わっていることを感じることができ、貴重な時間を使っていただいたこと感謝しています。」

など、今回のツアーで参加者それぞれが感じたこともあるようです。

今回のツアーは"木を学ぶ入口"に過ぎません。森を知ること、木を選ぶこと、地域材を使うこと、それぞれが未来の森林を守る大切なアクションにつながります。参加していただいた皆さんに、木の魅力、森の大切さ、地域産材の価値が少しでも届いていれば嬉しいです。

また次回、お会いできることを楽しみにしています。

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