命をつなぐ見守りの輪。公社の「孤立死対策の取り組み」を紹介しました
コミュニティづくり2025.12.15
10月30日(水)、ユニコムプラザさがみはら(相模原市南区)で「かながわ住宅確保要配慮者居住支援フォーラム2025 in 相模原」が開催されました。
主催は、居住支援法人であるNPO法人横浜市まちづくりセンター。
「誰もが安心して暮らせる住まい」をテーマに、公社・行政・地域企業など7団体が登壇し、居住支援の現状と課題を共有しました。
「孤立死」を防ぐために、公社ができること
フォーラムでは、公社が「孤立死対策」をテーマに、安心して暮らせる団地を目指す取り組みについて講演を行いました。

公社の孤立死対策について講演する運営管理課の鈴木航さん
高齢化や家族構成の変化により、神奈川県内では年間約5,000件もの孤立死が発生しており、公社の賃貸住宅でも年により差があるものの、毎年20件前後の孤立死が報告されています。
公社の賃貸住宅の高齢化率(契約者本人が65歳以上)は2025年11月時点で51.3%。孤立死は、特に高齢単身世帯での発生が増加傾向にあり、孤立死は誰にでも起こりうる身近な社会課題となっています。
こうした課題を解消し、「誰もが安心して暮らせる住まい」を実現するために、公社では2012年度から孤立死防止に向けた取り組みを継続しています。
取り組み① 自治体・生活関連団体との連携協定
現在、公社の一般賃貸住宅が所在する16自治体すべてと見守り協定を締結し、地域見守りネットワークを構築しています。
また、ガス会社や新聞販売店など6つの生活関連団体とも連携協定を締結。入居者の安否に関する情報共有を行うなど、地域全体での見守り体制を強化しています。

フォーラムの前日、29日(火)に大和市と「地域の見守りと安心できるまちづくりに関する協定」を締結、これで公社賃貸住宅がある全市町との協定締結ができました
取り組み② 団地みまもりサポーター事業
各自治体やご入居者による日常的な見守り活動に加え、公社では一部の団地で団地の美化や交流を通じて地域のつながりを育む「団地活性サポーター制度」による見守り活動も導入しています。
この制度では、大学生が自らの専門分野を活かしながら団地に住み、地域コミュニティの活性化を支援。
住民同士の顔の見える関係を築くことで、孤立の防止にもつながっています。
浦賀団地(横須賀市)では、神奈川県立保健福祉大学の団地活性サポーターたちが、孤食を防ぐことを目的に、月に一度「どんぶりの会」を開催。団地のご入居者と一緒にお昼ご飯を食べながら、地域コミュニティの絆を深めています
取り組み③ 公社の見守り支援サービス「RefPaC(レフパック)」
①と②が「外からの見守り」であるのに対し、RefPaC(レフパック)は「住宅の中からの見守り」を行う公社独自のサービス。
冷蔵庫などのドアの開閉を感知する小型センサーを設置し、一定時間動きがない場合に登録されたご家族や管理会社へメールで通知。もしもの時に早期対応ができる「見えない安心」を支えています。
取り組み④ 継続的な見守り体制
公社は、管理会社による定期的な訪問を行ったり、地域ネットワークへの参加を通じて、「ちょっと気になる」高齢者を地域ケアプラザや行政への相談や支援につなげる体制に参画したりしています。
また、季節ごとに熱中症やヒートショックへの注意喚起ポスターを掲示するほか、入居者団体とともに「孤立死防止検討会」を開催し、課題共有と改善を続けています。

ヒートショックへの注意喚起ポスター(一部)
命を救う「気づき」
講演では、これまで積み重ねてきた見守りの仕組みが機能したケースを紹介しました。
- 新聞が数日分たまっていることに、近隣住民が気づき、管理会社を通じて通報。行政と福祉が連携し、脱水症状で動けなくなっていたご入居者の命を救った。
- 回覧板がかかったままの状態を不審に思った近隣住民が安否確認を行い、倒れていたご入居者を発見。救命につながった。
「地域の目」が、行政・管理会社・そして公社との連携につながり、命を守るネットワークとして実を結んでいます。
連携の力で「安心して暮らせるまち」を
今回のフォーラムでは、相模原市、かながわ住まいまちづくり協会も登壇し、それぞれが行っている居住支援の取り組みを紹介しました。
相模原市からは行政としての支援制度、協会からは地域の相談窓口としての役割や、民間事業者との連携事例が紹介されました。
続くパネルディスカッションでは、「みんなで考える居住支援」をテーマに、高齢者、外国人、低額所得者などの要配慮者と呼ばれる方々の、住まい探しに不安を抱える方々への支援について議論が交わされました。
要配慮者の方々は、
- 高齢による孤立死への懸念
- 収入や保証人の不安定さ
- 言語や文化の違い
といった理由から、賃貸住宅を借りづらい状況があります。
現状の課題を共有し、「どうすれば安心して暮らせる住まいを確保できるか」「地域としてどんなサポートができるのか」という視点で意見交換が進みました。
フォーラム全体を通して、「誰もが安心して暮らせるまちづくりは、一つの組織だけでは実現しない。連携の力が欠かせない」ということを強く実感できる内容となりました。

住まいを提供する立場としては、なんらかの懸念がある方に部屋を貸すことへの悩みがある一方で、要配慮者の住宅確保を支援する立場からは、「どうにかして住まいを確保したい」という切実な思いがあります。
そうした立場の違いや、それぞれが抱える課題が具体的に共有され、多角的な視点から学べる貴重な時間となりました。
フォーラムを通じて改めて感じたのは、賃貸経営の難しさと同時に、「住まい」が地域社会の中で公共的な役割を担う存在でもあるということ。
孤立死防止の取り組みは、公社だけで完結するものではありません。行政・地域・住民・自治会といった多方面の協力があってこそ成り立ちます。
そして、孤立死を防ぐ仕組みは制度だけではなく、「昨日からあの人を見かけないな」という小さな気づきから生まれるもの。その気づきの積み重ねが、人の命と暮らしを支えています。
公社はこれからも、誰もが安心して暮らせる環境づくりに取り組んでいきます。