竹山団地で東京都住宅供給公社との合同見学会を開催しました!
公社のこと2025.09.16
2025年6月、東京都住宅供給公社(以下、東京都公社)が「竹山団地プロジェクト」の視察に訪れました。
竹山団地(横浜市緑区)は、1970年に竣工された開発面積45haの大規模団地です。現在も6,000人以上が住んでいますが、住民の高齢化やコミュニティの希薄化といった社会課題に直面しています。
2020年3月、神奈川県住宅供給公社(以下、神奈川県公社)は神奈川大学と連携協定を締結しました。竹山団地が抱える社会課題の解決に向けて、同大学のサッカー部員が団地を寮のように住まいながら、共同生活や地域活動への参加を経て、総合的な人間教育と地域活性化につながることをめざし、公社・大学・地域で協力して取り組んでいます。
2025年4月、団地内の商店街で長らく空き店舗となっていた2区画を改修した新施設がオープン。竹山団地での取り組みは、さらなる広がりを見せています。
東京都公社でも大学との連携に取り組んでいて、大学と連携した地域活性化の事例として、「竹山団地プロジェクト」の取り組みについて教えてほしいとの依頼を受け、新施設を会場とした説明会を開催しました。
また、この日は自社の取り組みについて学ぶ機会として、竹山プロジェクトに関わっていない神奈川県公社の職員も参加させていただくことに。総勢26名が参加する会となりました。
神奈川公社の説明に入る前に東京都公社の奈須部長よりご挨拶をいただきました。
「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。竹山団地での活動からいろいろと学ばせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。」
まず神奈川県公社の竹山団地プロジェクトを担当する職員より取り組みの経緯や成果、今後の展望等について説明を行いました。
竹山団地プロジェクトのキーマンである神奈川大学サッカー部監督の大森監督から相談を受けたのは2019年3月。
大森監督は、同大学サッカー部の指導をする中で、「サッカーだけに打ち込むのではなく、地域社会にも参加し、サッカー以外にも目を向けた広い視野をもつ人間を育てたい」という構想をお持ちでした。「F+1」(Football+何かひとつ)と掲げたその思いを実践する場を探されていたところ、ご縁をいただき神奈川県公社とつながりました。そのすばらしい構想に賛同する形となり、プロジェクト発足に向けて準備を進めることに。
総合人間教育の場所として選んだのは竹山団地。
住民の高齢化率が高く、ほとんどはエレベーターがついていない階段室型の団地のため、上層階にあたる4、5階の住戸が埋まりにくいといった課題がありました。公社賃貸住宅の空き部屋を活用し、そこに学生たちが住まいながら社会参加をすることで、学生はコミュニケーション力や実践力を高め、同時に地域の活性化に寄与していくという竹山団地プロジェクトのベースが生まれました。
その後、2020年3月に竹山団地プロジェクトが始動。
1年目には竹山団地内の公社賃貸住宅で空き部屋となっていた4、5階の5戸を大学へ賃貸し、13名のサッカー部員が居住。5年目を迎えた現在は、団地内の22戸に全サッカー部員約60名が住みながら、地域の活性化に向けた様々な取り組みを行っています。
神奈川県公社が、竹山団地プロジェクトをはじめ団地再生事業において大切にしていることは、住民を交えた継続的な「対話」。
楽しい雰囲気の時もあれば、納得がいくまでお互いの意見をぶつけ合うときもありますが、本気の「対話」があるからこそ、お互いを理解し、スムーズな情報共有が行えています。
今後も「住民を交えた『対話』を続けていけるよう、公社として責任を持って取り組んでいきたい」と担当職員は語ります。
次に神奈川大学サッカー部の大森監督より神奈川県公社に依頼するに至った背景や各取り組みについて、エピソードを交えながらお話いただきました。
監督はご自身の経験から競技時間以外の取り組みの大切さに気付き、地域活動を通して社会的スキルも身に着けてもらいたいと考えていたそうです。
地域活動へ参加する際に活かされるコミュニケーション力や周りを見て動く力などは、トップレベルのアスリートたちが共通してもっているスキル。それらは実際の活動を通して身につくものであり、サッカーのプレーにも良い影響を与えることが期待されます。
「サッカーの試合は90分ですが、スローインやゴールキック等の時間を除いた実際の試合時間(アクチュアル・プレーイングタイム)は60分。さらに、そのうち1人がボールを持っている時間はわずか1分30秒にすぎません。残りの58分30秒は、味方を活かすため、パスを受けるために動いたり、次のディフェンスに備えたりと他の人のサポートに回っています。日常生活においても、競技時間以外(58分30秒)に地域活動に参加することで、競技時間(1分30秒)の質を高めてほしいという考えから、知人を介して団地へ住みながら地域活性化に取り組みたいという思いを相談しました。」
地域活性化の取り組みとして、介護予防教室や休耕地を活用した農園の運営、スマホ教室、子どもたちの学習支援などを行っています。多岐にわたって活動を展開しており、今や竹山団地には欠かせない存在です。
商店街の端にある小さな空き店舗で始まった介護予防教室。
始めの頃は参加者が1、2人しかいませんでしたが、徐々に参加者が増え、とうとう会場に入りきれず、扉を開けたまま開催するほどに。
2024年に商店街の他の2区画を改修し、2025年からは同じ商店街のなかでも一番大きな区画である「未来研究所 竹山セントラル」にて開催しています。
また、団地の近くにある休耕地を活用し、数々の野菜を栽培する農園運営の中心に立っています。
取引先や食堂などとの調整役を担っている学生は、サッカーでのプレーにも変化が生まれているようです。
「まだまだですが、少し動きがよくなってきました」と嬉しそうに語ってくださいました。
質疑応答の時間にも様々な話が飛び出しました。
「竹山団地は賃貸住宅よりも分譲住宅の戸数の方が多いとのことですが、これまで県公社さんは地域とはどのように関わってきたのですか。」
「確かに竹山団地は分譲住宅が大半ですが、団地の商店街を公社が所有していることなどもあり、分譲・賃貸の比率にかかわらず、地域との関わりを大切にしてきました。
竹山団地の連合自治会とは昔からお付き合いがあり、いつでも対話できる環境が整っていて、その土壌があったからこそ、学生の入居や地域参加の話も受け入れてもらえたのだと思います。」
長年、大切にしてきた地域との関係が、竹山団地プロジェクトの実現につながっていることを再確認できました。
現地で活動に携わる皆さんから、直接お話を伺うことができ、とても貴重な機会となりました。
取り組みについて話す姿や表情からも、竹山団地プロジェクトにかける思いが伝わってきました。
また、学生たちが持つパワーと、それを支える方々の熱量に圧倒されました。
2024年度に関東大学サッカーリーグ2部へ昇格し、今季も熱戦を繰り広げる神奈川大学サッカー部。
竹山団地での活動だけでなく、ピッチで奮闘する姿からも目が離せません。今後の活躍も楽しみにしています!
関連WEBサイト
関連動画