住宅の安全・技術・未来が集結する拠点「スクエアJS」視察レポート

団地コラム2025.11.25広報担当

10月、日本総合住生活株式会社(JS)が運営する複合施設「スクエアJS」(さいたま市桜区)を公社の技術職のメンバー(2025年度新卒採用の2名を含む)で視察させていただきました。

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JSはUR都市機構の関連法人として、集合住宅管理や設備の開発提供をしている会社です。そして、SQUARE JS(スクエアJS)は、安全(SAFETY)・品質(QUALITY)・信頼(RELIANCE)を理念に掲げ、住宅の修繕・改修の提案、技術開発、訓練、緊急対応といった幅広い機能を集約した総合拠点です。
施設の構成や運用体制、技術教育、地域との関係など、多方面から見どころの多い視察となりました。

今回は、公社に加え、神奈川県住宅供給公社グループとして、公社賃貸住宅等の管理を行っている若葉台まちづくりセンターかながわ土地建物保全協会も参加し17名で、今のトレンドや建物を管理するためのツールなどを学びました。
スクエアJSは A~F棟の6棟で構成されています。「研究・開発」「訓練・体験」「緊急対応」「社会発信」を一体的に担っています。

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改修現場で活躍する技術や工具

まず、訪れたのはD棟にあるJSギャラリー。ここではJSが開発した部品・工法・工具等が展示され、案内の方とサイネージなどで紹介しています。

玄関・浴室・洗面・台所・居室・維持管理の6つのテーマごとに、最新の住宅技術が紹介されています。

玄関扉やドアノブ、インターホンの変遷を紹介。また、浴室まわりの改修技術では、高齢化に伴い、浴室にあとから手すりを設置するケースが増えていますが、補強の無いところに壁を壊さず設置できる工法が紹介されていました。特殊な金具や工具を使うことで、余計な工事を減らし、工事期間の短縮や工事騒音の低減等、住まいへの負担を軽くしていました。さらに、浴室の壁や浴槽の下地となる浴室ブロックや扉交換でも、従来の課題を踏まえた改良製品が並び、現場目線での進化を実感しました。

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歴代のインターフォンがずらり。ボタンがあったら押してみたくなるのが人の性(笑)

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手すりの設置面が石膏ボード面の場合

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手すりの設置面がコンクリート面の場合

古く冷たい感じの浴室の人研(じんとぎ)ブロックを取り替えることなく温かみのある樹脂カバーで一新させる工法や摩耗した敷居をカバーする工法など、リフォーム現場で実際に使われている工法の"実物"を見ることができます。

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また、工具では、給水管に使っているSGP管を撤去する際に使用する工具で、低騒音・漏水防止の優れたSGPカッター。切断は押しつぶしながら行うため、残水が入っている配管でも水漏れしにくい構造になっています。マンションや団地のように近隣環境への配慮が求められる現場では、大きな力を発揮しそうです。

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鋼管SGPカッター

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切断面は押しつぶされて閉塞される

昭和の暮らしから今を伝える"住宅設備"

次はC棟へ。ここは、実験・検証・展示の3つが融合したエリアで、最初に昭和期の住宅設備を再現したお部屋を見学しました。
ここでは、現在ではなかなかお目にかかれない貴重な品々が展示されています。

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昭和期のお部屋を再現。小物も当時のものを集めたり寄贈してもらったりしているそう

住宅史を肌で感じることができる空間でした。設置されているのは昭和33年ごろに製造された流し台と換気扇で、当時の団地キッチンをそのまま再現。換気扇は今主流のシロッコファンではなく、プロペラ型。実際に動かすこともでき、見学者からは「まだ動くんだ!」と驚きの声が上がっていました。マニアの間でも人気の"お宝"だそうです。

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昭和33年ごろに製造された換気扇

別の部屋には、JSが開発した商品『リノチョイス』を用いた「リノチョイス住戸」と「木質系コア住宅」のモデル住戸がありました。先に見学した昭和の部屋と同じ間取りでも改修によって見違えるように快適な空間になっていました。
「リノチョイス」は、浴室の段差が解消され、台所は給湯器一体型レンジフードが設置され、床も遮音性の高いフローリングに改修されていました。
「木質系コア住宅」は、キッチン、トイレ、浴室などの水回りを集約させ部屋の中心に据えています。これにより、周囲の"ロの字型"の空間を自由に使うことができ、回遊性も生まれます。また、RC雑壁の撤去や床下の有効活用によりメンテナンス性の向上も視野に入れた設計など、昔と今を同時に見比べられることができるのはわかりやすく、大変勉強になりました。

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リノチョイス住戸のモデル住戸

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木質系コア住宅のモデル住戸

技術と安全を支える

次はA棟にある「技術開発研究所」と「緊急事故受付センター」を見学。
「技術開発研究所」では集合住宅の修繕に必要な工具・工法やリニューアルのための製品の研究開発を行っているほか、「環境技術グループ」では水質検査等の分析業を行っていて、理科室にあるような道具や様々な機械が並んでいました。
「緊急事故受付センター」 では、24時間365日体制で水漏れや停電などの住まいの緊急事故に対応していました。モニターにはリアルタイムでデータが映し出され、まるで司令室のようでした。※こちらは撮影禁止

"学びの現場"に潜入

E棟は、従業員や協力会社のためのトレーニングセンターです。ここでは、昭和50年代の公団住宅の標準的な住戸を実物大で再現してあり、壁・床・構造材などが可視化され、「見える形」でつくり方や仕組みが学べるようになっていて、普段は絶対に見られない住宅の"内臓"をじっくり観察できます。配管ルートや電線の通し方、下地材の構造など、知れば知るほど奥深い世界。さらに、受講生たちが実際に使う工具などもあり、訓練している姿が想像できました。技術者や職人たちの「技術が住まいを支えている」という実感も湧きました。

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普段は見ることのない配管ルート

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参加した職員からは、

「見学を通じて、単に建物のデザインや機能性だけでなく、住まいがどう進化し、人々に新しい価値を提供するかという視点がとても大切であると再認識しました。」

「設備の変遷や技術、公営住宅のモックアップ、住宅改修のアイデアなど、大変勉強になりました。」

など、大変勉強になったようです。

スクエアJSは、単なる技術開発施設ではなく、研究・訓練・対応・発信を統合した「住宅技術の総合プラットフォーム」。昭和の住まいから現代の改修技術までを一度に体験できるこの施設は、「住宅」という日常に、多くの知恵と努力が詰まっているということを再認識でき、また、住宅に関わる人々にとって多くの学びがある場所。現場力と技術力を兼ね備えたこの拠点は、今後の公社の事業などにおいても大きなヒントを与えてくれる場所だと感じました。半日では学習しきれないほどの展示や技術の数々で、機会があればまたお邪魔したいと思いました。

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