住まいとくらし~団地の外装リニューアル①~
団地コラム2024.04.15
公社の賃貸住宅は建物の維持管理の一環で外壁塗装を行っています。外壁の塗装を行う場合は、屋上の防水工事や竣工当時の鉄製の手すりをアルミ製に変更するなどの工事も同時に行い、見た目だけでなく機能もリフレッシュする場合もあります。
今回の「住まいとくらし」ではそんな外壁塗装のリニューアルをした団地をいくつかご紹介します。
湯河原第3(湯河原町)
塗装前の「湯河原第3」1号棟
2020年、外壁塗装を終えた「湯河原第3」1号棟
コンセプトは"四季彩の宿「湯河原第3」"。万葉集にも詠われ、湯治場として栄えた湯河原の歴史を色彩に反映させるため、物件を温泉旅館に見立てて色彩設計を行いました。ポイントは、湯河原という風光明媚な自然豊かな地区の周辺環境と調和した色彩構成。住民がコミュニティを感じ、親近感とわかりやすさを大切にした印象づくり、経年変化(汚れ)を考慮し配色に落とし込みました。
暖簾(のれん)に模したアクセント色を階段室入口や階段の上裏(あげうら)に塗装。色により階段室の個性が出ていて、階段室に入る光によりアイボリーの壁に上裏の塗装が優しく反射し全体が色に包まれるデザインとなっています。
湯河原第3は第23回環境色彩コンペティショングッド・ペインティング・カラー改修部門で最優秀賞を受賞しました。(https://www.toryo.or.jp/jp/event/GPC/2020/2020index.html)。
藤沢西部(藤沢市)
塗装前の「藤沢西部」3-6号棟
2023年、外壁塗装を終えた「藤沢西部」3-6号棟
竣工当時の「藤沢西部」3-10号棟
2023年、外壁塗装を終えた「藤沢西部」3-10号棟
数字はそのまま生かして、ロゴを加えることで印象が変わる。
高明度・低彩度を中心とした色相と敷地内や街路の緑で主に成り立っている湘南ライフタウンの団地群。
藤沢西部は藤沢市の色彩景観ガイドラインに則しベースカラーをオフホワイトとし、アソートカラーは4色の暖色系で構成しています。
アクセントカラーは団地のロゴのみに小面積で使用。また周囲にある特徴的な建築物(幼稚園や赤い屋根の高層マンションなど)との調和を意識しながら色彩を計画しました。
色彩設計コンセプトは「団地を包む柔らかな光と影」。
住居に相応しい暖色系のナチュラルな配色は、団地の丘陵地を照らす光の色の変化や、季節で大きく表情を変える敷地内の自然を考慮した色彩に。天気の悪い日や鮮やかな植物の色が少なくなる冬でも、団地内が暗い印象にならないような工夫を施しました。
紫は藤沢市の花である「藤」から、青緑は近くを流れる引地川の「沢」からイメージしている。
大規模団地の外壁塗装になると、新旧両方の外壁の違いを見ることができる(左が外壁改修後、右が未改修)
小田原橘(小田原市)
塗装前の「小田原橘」2号棟
2020年、外壁塗装を終えた「小田原橘」2号棟
橘地区では江戸時代から柑橘類や梅の栽培をしていたこともあり、緑豊かな中に映える色彩設計としました。
地区の団地のとしてのまとまり感を大切し、周辺宅への圧迫感を軽減できるよう配慮。
ベースカラーは「橘の白」をイメージ。アクセントカラーには日本の伝統色「藤色」「露草色」「若竹色」をイメージし外壁の一部を塗り分け、更にアクセントカラーの明度を高くした色を階段の上裏に配し、外と中の空間を緩やかに結びつけ居住する棟への帰属意識を高めました。
神奈川県住宅供給公社の愛称「KJK」から「K」を抽出しシンプルな斜めのラインで表現。「K」の斜めラインによるデザインは、連なる切妻屋根と変化する空や自然の色彩に見えたり、伝統的な千代紙のモチーフに感じたり、見る人によって様々な捉え方ができるようにしました。
2020年に公社は70周年を迎えたこともあり、神奈川県住宅供給公社ならではのオリジナル性をデザインしました。
二宮団地(二宮町)
塗装前の「二宮団地」16号棟
2022年、外壁塗装を終えた「二宮団地」16号棟
二宮団地は一戸建てと集合住宅が混在する団地です。賃貸住宅は団地内に2~5棟ごとにいくつかのブロックに分かれていて、各ブロックごとにコンセプトを変えて外壁塗装をしています。
二宮第6賃貸と第8賃貸の外壁塗装は二宮団地に居住するデザイナーが色彩設計を考え、地域に愛される二宮町の魅力をデザインに込めた作品です。
ベースカラーは、緑豊かな自然環境及び2色のアクセントカラーと調和するよう、黄・緑よりのアイボリー系とし、妻壁全面、1階部分は帯状に、二宮町の海(ニノミヤブルー)をイメージした鮮やかな青緑系を配色。
大庇には、吾妻山の山頂に咲き誇る菜の花を模した黄系を配色し、全体にまとまりを持たせました。
2色のアクセントカラーは遠くからも良く見える彩度の高い色を採用し、地中海リビエラ地方の風景も意識し、全体の調和を取るため、階段室の外壁にはアクセントカラーの中間色相のグレー系を配色としています。
東側妻壁には、団地名をプロット。遠くからでも文字がはっきり認識できます。
公社では毎年、さまざまな団地で外壁塗装を行っています。
それぞれその地域や立地に合った色やコンセプトで団地がリニューアルされています。
外壁塗装を行うと入居率がアップするといったデータも。外観の印象も大切ですね。
今回ご紹介した「公社の賃貸」
・湯河原第3(湯河原町)
https://www.kousha-chintai.com/danchi-intro/other/K119742000.php
・藤沢西部(藤沢市)
https://www.kousha-chintai.com/danchi-intro/other/K119743000.php
・小田原橘(小田原市)
https://www.kousha-chintai.com/danchi-intro/other/K119711000.php
・二宮団地(二宮町)
https://www.kousha-chintai.com/danchi-intro/other/K119642000.php
関連サイト
「住んでいる方や地域の方の気持ちが和らぐ色彩を心掛けています」
現在まで、公社の4団地の外壁塗装の色彩設計を手掛けているサッコデザインオフィスの鈴木章子さんのインタビュー取材
https://www.kousha-chintai.com/blog/landscape/-2024vol1.php