住まいとくらし ~団地の商店街、ショッピングセンター~
団地コラム2023.09.15
団地内の消費を支える商店街
規模が大きな団地には商店街やショッピングセンターが併設されていて住民の生活を支えています。
昭和40年代までの団地商店街はスーパーマーケットや銀行・郵便局などに加え、生鮮食品や飲食のほか、洋品店、電化製品店、書店や理美容といった生活に欠かせない個人商店が並んでいるのが主流でした。団地が大きければ大きいほど、市街地までの距離が離れ、時間がかかります。そこで、団地の開発にあたっては住宅だけでなく、団地内に団地の人々を支える「利便施設」として、商店街やスーパーマーケットを設置してきたのです。
団地内で暮らす人々の消費を支える商店街とショッピングセンター
汐見台団地(横浜市磯子区)「住みよい暮らしを創る 神奈川県住宅供給公社30周年記念誌」より
汐見台団地(横浜市磯子区)「楽しい暮らしを造る 神奈川県住宅公社創立15周年記念」より
商店街の賃貸店舗は団地に必要とされる業種があらかじめ決められており、その業種以外は申し込みができなかった。
昭和60年「南が丘ショッピングセンター入店者募集案内」より【画像をクリックすると拡大されます】
21世紀に入ると、いくつかの団地の商店街に空き店舗が発生するようになりました。団地の人口減少や子育て世帯の減少による地域の消費減退、大型商業施設のオープンにより、顧客数や売り上げが減ったことによるものです。
商店街を活用した団地活性化
相武台団地(相模原市南区)で2015年9月にスタートした「グリーンラウンジ・プロジェクト」。
商店街を活用し、少子高齢化が著しい団地の活性化を図る空き店舗を活用した取組みです。商店街前広場の活用、イベントの開催などに協働して取組む出店者を公募しました。
同プロジェクトに賛同する店舗・施設の増加に伴い、日常的な"にぎわいの創出"に加え、春と秋に開催される大規模イベントが定着し、当初のねらいどおり店舗関係者で主体的に企画運営されるようになっています。
相武台団地(相模原市南区)の相武台商店街「住みよい暮らしを創る 神奈川県住宅供給公社20周年記念誌」より
グリーンラウンジ・プロジェクトの由来は、商店街前の広場に樹齢50年以上の大きなケヤキがあり、
この「ケヤキ=緑」と「広場=くつろぐ場」をシンボルとしたことによる。
この広場では、定期的にさまざまなイベントが開催されていて、地域住民の交流の場となっている。
●関連動画
"みらいへのプロジェクト"多世代が集う交流拠点「相武台団地」
ニーズに合わせた商店街の廃止や再構築
団地内の商店街は以前のような賑わいがなくなってきているところが増えているため、更地にし、地域の新たなニーズに対応するよう、コンビニエンスストアやドラッグストア等に出店してもらうようにするケースも出てきています。
緑ヶ丘団地(厚木市)の緑ヶ丘店舗「住みよい暮らしを創る 神奈川県住宅供給公社20周年記念誌」より
こうした新しい形で空店舗や商店街を利活用した最初の事例は、厚木市の緑ヶ丘団地の商店街で、2014(平成26)年に事業者を公募のうえ、建物を解体し、翌年に定期借地権によりコンビニエンスストアとドラッグストアが開業しました。
横須賀市の不入斗店舗は2017(平成29)年に建物を解体し、2018(平成30)年2 月に神奈川県内では初となる介護相談窓口を併設したコンビニエンスストア「ケアローソン」が開業しています。
「春日台センターセンター」は、昭和40年代にできたスーパーマーケットを解体、更地にし、人口減少・少子高齢化にあるこの地域において、福祉を中心としたコミュニティ形成のため、グループホーム、小規模多機能型居宅介護、放課後等デイサービス、寺子屋、シェアオフィス、コロッケスタンド、コインランドリー&洗濯代行など、複合型の福祉拠点として整備されました。誰もが気軽に立ち寄れるコミュニティの中心(センター)にするという思いから、「春日台センターセンター」と名付けられました。
ここは、昭和40年代に公社が開発した土地に、地域に愛されたスーパーマーケットがあった場所。その後、社会環境の変化や建物の老朽化など、利便施設としての機能を充分果たすことが難しくなったことから、「春日台店舗跡地利活用事業」として地域のニーズに貢献できる施設を公募により公社が誘致し、定期借地により事業化したものです。
公社としても、課題に直面する郊外型団地のモデル的な取り組みとして、他団地での展開も視野に入れ引続き支援していきます。
●関連動画
汐見台団地記録映画