緑ヶ丘団地集会所にディスプレイウォールが完成!公社と工芸大が目指す"集まる場所"のかたち
コミュニティづくり2025.10.21
6/28(日)、今年2月に改修を終えたばかりの緑ヶ丘団地(厚木市)の集会所に、東京工芸大学(以下、工芸大)の学生たちが手がけたディスプレイウォールが新たに設置されました。
この集会所は、公社と東京工芸大学が連携して取り組む教育・研究プロジェクト「ミドラボ」の一環として改修されました。目指したのは、「地域のみんなが気軽に集まれる、使いやすい場所」。
建築やデザインを学ぶ学生たちが参加して、集会所をもっと居心地のよい、交流の生まれる空間にするにはどうしたらいいか、学生たちが自ら考えました。
そのアイデアのひとつが、「ディスプレイウォール」。「モノを介した小さな交流」を生み出す仕掛けとして発案し、壁一面を自由に飾ったり、使い方自体も住民の皆さんと考えていくことで、集会所への愛着も育んでいくことをねらいとして生まれた企画です。
構想を練り、設計図を描き、実際に木材を加工して、設置まで、すべて学生たちの手で作り上げました。
公社 × 工芸大 「ミドラボ」とは?
公社と工芸大は、2018年1月に連携協定を締結し、同年より「ミドラボ」プロジェクトの活動を本格的にスタートしました。
このミドラボは、工芸大が持つテクノロジーやアートの知見を活かし、公社が保有する緑ヶ丘団地とその周辺地域をフィールドに、団地の住戸や集会所のリノベーション設計、地域の新たな住まい方・交流のあり方についての検討・提案を続けています。
- 団地に学生が住みながら活動する「団地活性サポーター制度」
- 集会所を地域にひらき交流の場として活用する「ミドリバ」の実施
- 田村研究室による「団地のコミュニティベンチ」構想が、「第20回集合住宅再生・団地再生・地域再生学生賞」の最優秀賞を受賞(2023年)
- 厚木市から「特別表彰 未来につながる一歩功労」を受賞(2025年)
・・・と、さまざまな形で団地と地域の活性化に取り組み、賞もいただくなど、ミドラボは着実な成果を上げています。
ミドラボが描く「オープンストリート構想」
集会所の改修は、「ミドラボ」の「オープンストリート構想」に基づいて実施されました。
この構想は、団地の垣根やフェンスを取り払いつつ、道を団地内に通してつなぐことで、団地を「開いて」いき、新しい交流の風景をつくろう、というもの。
団地の住民だけでなく、地域の人もふらりと立ち寄れるような交流の場をつくり、緑ヶ丘エリアのコミュニティ全体の活性化を目指し、社会実験なども行いながら、検証をすすめています。
2024年2月には、学生たちが自ら設計した集会所の原寸大図面を商業施設の床にテープで描くパフォーマンスも行いました。
この「オープンストリート構想」が評価され、国交省の「令和5年度 住まい環境整備モデル事業(第2回)」にも選定。この補助金を活用して、2025年2月に集会所の改修工事が完了しました。
改修前の集会所。植栽で中が見えづらく、閉鎖的な印象
改修後の集会所。フェンスと垣根を取り払い、オープンな雰囲気に生まれ変わりました
いよいよ当日!学生によるディスプレイウォール制作
この日、ディスプレイウォール制作プロジェクトに集まった学生は20人。
まずは、制作に取りかかる前に、同大学大学院工学研究科の1年生がリーダーとなり、はじめに今日の作業の流れや、「この場所をどんな場所にしていきたいか」といった目的を、集まった学生たちと共有しました。
作業を効率的に進めるために、認識を統一していきます。
教授や公社の職員もサポートに入ることもありましたが、作業の中心はあくまで学生たち。主体的に意見を出し合いながら、プロジェクトを進めていきました。
「学生が来てくれるのはありがたい」 住民の声
ディスプレイウォールの制作が行われたこの日、午前中は、団地の居場所づくり・交流の一環として、ここ集会所でイベントが開催されていました。
Kosha33ブログ:笑顔あふれる!厚木市緑ヶ丘団地集会所イベント。バスボムがあふれるハプニングも!
イベントが終わったあと、午後に学生たちによるディスプレイウォール制作があると聞いた住民の方々。
ワークショップに参加していた7名の方が、「見学していってもいいかしら?」とそのまま会場に残り、学生たちの説明に熱心に耳を傾けていました。
学生の説明を聞いた住民から、こんな声が届きました。
「学生が団地に来て盛り上げようとしてくれている。これはとてもありがたいこと。だから、住民側もできる限り参加していくことが大切だと思う。先日の住民同士の集まりでも、そんな話をメンバーと共有しました。がんばって。」
学生の真剣なまなざしや、一つひとつの工程を丁寧に進める姿が、住民の方の心にもしっかり届いていたようです。
ディスプレイウォール制作の裏側
制作作業は、建材の種類ごとに3チームに分かれて進行。12:00〜14:00の第1部では鋼管の設置、木材の清掃などを行いました。
この日は、学部も学年も異なる学生たちが協力し合いながら、ひとつのものを作り上げていく日。
作業の合間の30分休憩では、お菓子を囲んで会話が生まれ、普段接点のない学生同士にとっても、良い交流のきっかけになっていたそう。
14:30〜18:00の第2部では、木材の取り付けや異素材の組み合わせを慎重に調整。
使用したスペーサー(隙間を埋めて安定性を高めるための部品)は、大学にある3Dプリンターで出力するなど、工芸大らしい工夫が光っていました。
つながる風景、動きはじめる場所
6時間にもおよんだディスプレイウォールの制作は、無事、予定通りに完成しました。

作業前は、まだ棚板のないシンプルな状態。仕切り部分は、今回のディスプレイウォール制作に先立ち、改修工事の際にあらかじめ設置されていました
6時間かけて棚板を設置。ベンチができたり、本棚ができたりと、賑やかになりました
完成後は、学生たちが思い描いていた「こんなふうに使ってほしいな」というイメージイラストをもとに、もともと集会所にあった本やトロフィー、そして、「ミドリ部」(工芸大生と団地住民の方々によるガーデニング活動)で使うために住民の方が持ってきてくれたプランターや鉢などを、丁寧にセッティング。
作業がすべて終わったあと、学生たちはキッチン内でジュースを準備していました。すると、キッチン前に設けたディスプレイウォールに集会室側から別の学生が自然と近づいて、カウンターのように使い始めます。
ディスプレイウォールをはさんで学生同士の会話が自然と弾み、にぎやかな雰囲気に。
その様子を少し離れた場所から静かに見守っていた先生が、ぽろり。
「いい風景ですね。まさに、こういうふうに使ってほしかったんです。」
完成したその瞬間からすでに、つながる場所として動きはじめていました。
学生たちの「想い」と「手」で形作られたディスプレイウォール。この壁面が、新たな交流のきっかけになっていくことを願っています。
そして、改修されたこの集会所が、地域と学生、世代と世代をつなぐ、「ひらかれた場所」として、これからも育っていくように。
公社、工芸大、地域の皆さんと力を合わせながら、大切に作っていきます。

