【「with Public」企画インタビュー】団地の現場から見える「共創」のリアル──地域をつなぐ現場の話

コミュニティづくり2026.02.27広報担当

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隼ファシリティサービス株式会社 代表取締役 田中隼平さん

団地やマンション管理において、清掃員などを地域から雇用する取り組みを起点に、団地という生活の現場で「共創」を実践している田中隼平さん。
その経験を生かしてFMラジオ番組「サーキュラーエコノミー Plus チャンネル」のMCも務めています。SDGsや地域循環経済(サーキュラーエコノミー)をテーマにした番組で、仕事柄もあって、団地やマンションの管理組合で団地再生や活性化に取り組む方などを数多くゲストに迎えて話を聞き、横浜発の地域循環やウェルビーイングの実践について発信しています。
就労機会を得るのが難しい高齢者や、これまで就労の機会を得られずにいた若者の雇用、住民同士の合意形成の難しさなど、団地には多様な課題と可能性が同時に存在します。
今回のインタビューでは、団地の管理事業を軸にした循環型の雇用づくりや、地域コミュニティの中で生まれる葛藤と工夫、そして多世代が共に生きるためのヒントについて、現場での実感を交えながら率直に語っていただきました。

田中さんの現在のお仕事について教えてください。

田中さん:分譲団地やマンションなどを管理する会社で清掃などを請け負っています。特徴は「雇用のつくり方」にあります。管理物件の居住者やその周辺地域にお住まいの方を主として、一般的には雇用が難しいとされる高齢の方や、就労の機会や良い就労先に縁がなかった若者を積極的に受け入れています。

80歳の方にも現場で働いてもらっていますし、若い世代では、過去に引きこもりだった人や、ブラック企業で心身をすり減らして退職した経験のある人もいます。地域の中で人が循環していく仕組みをつくること自体には、大きな意味があると感じています。

高齢者や就労機会を得にくい若者などに仕事の場をつくり、「働く喜び」が循環する仕組みを実践していることが、金沢シーサイドFMの番組「サーキュラーエコノミーplus チャンネル」の趣旨と合致し、MCとしての出演にもつながっています。

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毎週金曜日の11時から放送の金沢シーサイドFM「サーキュラーエコノミーplus チャンネル」。「サーキュラーエコノミーplus」を切り口に、毎回ゲストの取り組みについて伺う内容で、田中さんはMCを務めています

団地での清掃活動は、住人や地域にどんな影響を与えていると思いますか。

田中さん:「清掃」と聞くと、単なる作業に思えるかもしれませんが、実は団地の中などでは「人と人が関わるきっかけ」にもなります。

住民の方が清掃に関わることで、「あの人、最近見かけないね」といった、ちょっとした変化に気づけるようになます。これは見守りにもつながります。挨拶や会話を通じて孤立を緩和し、地域の中に関係性が生まれていきます。
ただ、一方で、住民だけで清掃を担うのは難しさもあります。
住民だけだと"身内感"が強くなりすぎて、プロの清掃員としての感覚が鈍ります。逆に外部の人だけだと「よそ者に任せている」という感覚にもなりやすい。
そのバランスが、とても重要で難しいと感じています。

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東京の半蔵門のオフィスにお話しを伺いにお邪魔しました。

若者の雇用に取り組む中で、見えてきたことはありますか。

田中さん:正直、最初は僕自身もニート状態の若者が本当に働けるのか半信半疑でした。でも、実際に一緒に働いてみると、すごく真面目で、仕事の質も高い。

彼らの多くは「働く能力や意欲がない」のではなく、「働くきっかけがなかった」だけなんですよね。
紹介でつながった若者が多くて、こんなに働いていない若者がいたのか、と驚くところはあるのですが、実際に現場に出て、評価され、頼られるようになると、驚くほど変わっていきます。
今では、現場の中核を担う存在になっている人もいます。
雇用って、スキル以前に"きっかけ"と"信頼"が大事なんだと、現場で実感しています。

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様々な問題を抱えた若者の雇用は、友人の弟さんが前職で職場に馴染めず退職し、引きこもりになっていたと相談があったことがきっかけでした

公社の一部の団地では、賃貸住宅に大学生に住んでもらい、自治会活動の手伝いや、学生独自の活動を通じたコミュニティの活性化などで、地域に関わってもらっています。田中さんはラジオ番組で団地活性化に取り組む様々な方のお話を聞いてきていると思いますが、団地に学生や若者が入ることについて、どう思われますか。

田中さん:若い人が入ることで、団地の雰囲気は確実に変わります。

高齢者の方の中には変化を嫌う方もいますが、実際に若者が目の前で活動している姿を見ると、印象がガラッと変わることも多いようです。
ポイントは、「いきなり住む」よりも、まずは掃除などのボランティア的な関わりから入ること。顔を覚えてもらい、「あの子たち、ちゃんとやってるね」と思ってもらう。その延長線上で、「じゃあ住んでみたら?」という流れが自然に生まれるのが理想だと思います。

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若者と高齢者。徐々に信頼関係を結んでいくことが大事だと思います

学生や若者に活躍してもらう仕組みを分譲団地などに広げる際、難しい点は何でしょうか。

田中さん:やっぱり一番難しいのは「合意形成」ですね。

分譲マンションや団地の管理組合では、ワンオーナーの賃貸物件とは異なり、何かを決めるにも多くの人の同意が必要です。その中で、誰かが"旗振り役"にならないと、話は前に進みません。ただ、その役割を担う人は、周りから頼られる存在であると同時に、方向性や熱意のギャップで"嫌われ役"にもなりがちです。

住民同士だと人間関係が近すぎて、遠慮が出てしまうことも多いため、僕は「外部の人間が旗を振る」という形のほうが、スピード感も出て進みやすいと感じています。顔色をうかがわずに言える立場の人がいることは、実はすごく大事です。
学生や若者を取り込もうとする、新たな仕組みに魅力を感じる人がいる一方で、団地の将来を憂いながらも、「今のやり方を変えるのは怖い」と感じている人も多く、どうしても慎重な意見も出てきます。
いきなり全体で決めようとするより、「まずはできる人たちでやってみる」ことが大事に思います。実際にやってみて、「それなら自分も参加してみようかな」という人が少しずつ増えていく。そのくらいのペース感がちょうどいいのかもしれません。

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地域や住民、学生や大学など、どこにでも"旗振り役"になれる人はいると思うんですよね

分譲団地では、部屋ごとにオーナーが異なったりするため、受け入れが難しいという声もあります。

田中さん:分譲団地は、賃貸と違って"住まいのハードル"が高いのは事実です。

ただ、空き住戸の区分所有者と調整してうまく活用したり、管理規約を工夫することで、関わり方の余地はあると思っています。
また、賃貸住宅にはない、団地の管理に関する意思決定の場に、若者の視点を入れるのは面白いと思います。
たとえば、学生に住んでもらい、所有者でなくても「理事会インターン」として関わってもらう。単なる「オブザーバー」ではなく、議決権はなくても意見を言える立場として参加してもらうだけでも、若い視点が入ることで議論の質は変わるのではないでしょうか。
学生にとっても、管理組合の運営やお金の流れ、その使い方を若いうちに知るのは、社会に出る前の学びとしてもすごく価値があると思います。

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賃貸住宅よりハードルは高いかもしれませんが、分譲住宅でも若者が活躍できる可能性はあると思います

団地と若者が共存していくために、必要なことは何でしょうか。

田中さん:団地には高齢の方もいれば、子育て世代や学生もいて、すごく"社会の縮図"のような場所だと思います。ここでうまくいく仕組みができれば、他の地域にも応用できるヒントになると思っています。
一方で、団地ごとに文化や歴史も違うので、「このやり方をそのまま持っていけばいい」という単純な話でもありません。現場ごとに、住民の方と一緒に考え続けることが大事だと思っています。
若者が共存していくために必要なことは「自然に溶け込む」ことだと感じています。丁寧な対話を前提にしつつも、実際には多少強引になる場面もあり、どこかで"勢い"も必要になると考えています。
若者側は、実際に暮らしてみないと分からないし、昔から暮らしている住民や地域の方側も、実際に目で見て、共に過ごしてみないと分からない。
だからこそ、まずは少人数からでも実際に暮らして、活動してみる。その姿を見て、先入観の先にあるものを感じてもらうことが大切だと思います。
高齢化や空き家が社会課題となる中、正解や成功の形は一つではありません。
まずはやってみて、試行錯誤する。試す価値は十分にあると感じます。
共存は理念ではなく、実際の行動の積み重ねでしか生まれないと思います。

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現在は、横浜を中心に活動していますが、東京などさまざまな場所で活動できればと思っています

田中 隼平(たなか しゅんぺい)

1995年生まれ。明治大学を経て出光興産(株)に入社し、2023年に独立。団地や地域内の潜在的な労働力を「清掃」という形で雇用し、働く意欲が強い高齢者を中心に団地や地域内で循環経済を実践している。循環経済・サーキュラーエコノミー Plus の実践者として金沢シーサイドFM「サーキュラーエコノミー Plus チャンネル」のMCパーソナリティを務めるほか、一般社団法人横浜青年会議所 サーキュラーエコノミー部会に所属するなど、横浜市内の多様なステークホルダーと連携したまちづくりを推進している。

田中さんが登壇するトークイベント

関連サイト

横浜型地域循環経済「サーキュラーエコノミー Plus」の魅力をお届けするラジオ番組
https://www.circulareconomyplusraradio.com/

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