二宮団地の木質リノベーションが第42回住まいのリフォームコンクールにおいて優秀賞を受賞しました!
お知らせ2025.10.15
神奈川県住宅供給公社(以下、公社)は、第42回住まいのリフォームコンクールにおいて、応募総数296件から入賞し、優秀賞を受賞しました。
第42回住まいのリフォームコンクール優秀賞受賞
2025年10月6日(月)住宅金融支援機構 「すまい・るホール」(東京都文京区)にて、表彰式が開催されました。「住まいのリフォームコンクール審査委員会」(委員長:松村秀一 神戸芸術工科大学 学長)による審査の結果、上位賞7作品、ナレッジ賞3作品を含む入賞32作品が表彰されました。その中で、公社は優秀賞を受賞しました。https://www.chord.or.jp/news/2025/42_2025_press_release.html
特別講演会「建物の健康寿命を伸ばすリフォームへ」
表彰式の後には、本コンクール審査委員長の松村秀一氏(神戸芸術工科大学 学長)による「建物の健康寿命を伸ばすリフォーム」と題した特別講演会。
「入賞した建物の築年数は39〜94年(平均約50年)。建物の老朽化は進んでいるが、物理的寿命は意外に長い。人間と同様に、建物にも「健康寿命(=機能的に使える期間)」と「寿命(=物理的に存在する期間)」がある今後は、老朽建築を壊すのではなく、健康寿命をいかに延ばすかが課題となっています。」
パネルディスカッション(上位賞作品講評会)
休憩を挟んで行われた5名の審査委員によるパネルディスカッションでは、審査委員は以下のような話を交わしました。
「日本の住宅は物理的には長寿命だが、活用されず放置されるケースが増えている。その中で、ストック住宅をどう維持し、活かすかが今後の鍵であり、「建物の健康寿命を延ばすリフォーム」が、空き家対策などの社会課題や地域再生を担っている。今回、受賞した作品には、こうした課題に対する先進的・実践的な解決策が多く見られた。」
「リフォームというものは、建物が違い、地域が違い、施主が違う。人口が減り、新規着工戸数が減る中で、建築の仕事はリフォームに移ってきていて、1件1件が異なるものなので、いいものを作ってまた応募してほしい。」
「一旦役割を終えた建物を対象にするケースなど、チャレンジングな取り組みができると思う。」
「このリフォームコンクールはデザインコンクールではなく、社会課題をどのように捉えて、ストーリーやプロセスを組み立て、実践したかを評価するもの。何にフォーカスしているのかを明確にして、今後もこのコンクールに応募していただきたい。」
住まいのリフォームコンクール
全国各地で施工された住宅リフォームの事例を募り、優秀な事例について依頼主(施主)・設計者・施工者を表彰し、これを消費者や事業者に広く紹介することにより、住宅リフォームの促進とリフォームの水準の向上を図ることを目的としているコンクール。
主催:公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター 、共催:独立行政法人 住宅金融支援機構
優秀賞受賞作品「小田原地区木材業協同組合・公社による二宮団地再編事業」
二宮団地(中郡二宮町)で行った公社オリジナルプラン「小田原杉のリノベーション」。入居率が6割を切っていた二宮団地で隣接する小田原市などの山で育った杉材を使ったプランを導入したのは2016年。厚さ25mmの小田原杉の無垢フローリング、小田原杉のオリジナルキッチンも採用した木質化リノベは大変な評判を呼び、とくに地区外からの移住検討者への効果的な訴求ツールとして機能しています。
また、入居者の増加と二宮団地のコンパクト化(28棟856戸→18棟580戸)により、2020年度には入居率が約85%まで回復。漸減傾向にある二宮町人口の社会増にも貢献しているとの評価を得ています。
二宮団地再編事業(概要)
約50年前に首都圏のベッドタウンとして開発された二宮団地(中郡二宮町)は、一戸建分譲住宅と鉄筋コンクリート4階、5階建の公社賃貸住宅などの複合住宅団地。都心までの距離や間取り・断熱性、設備等が現代のニーズと乖離し、新たな価値の創出や魅力の発信が課題でありました。2015年度には団地内の公社賃貸住宅の入居率は約56%まで減退する状況の中、公社では二宮団地の存在意義やあり方を考え、地域資源や既存ストックを有効活用した魅力向上策を検討。湘南の最西端の海や里山の景観を保持し、自然や農業を楽しむ里山ライフを満喫できることを最大の魅力として位置づけ、その魅力を最大限に引き出すべく、2016年に「入居促進」「団地と地域の魅力アップ」「賃貸住宅のコンパクト化(集約)」を柱とした二宮団地再編事業に着手しました。入居促進では里山を感じるプランを導入することとし、県内産木材を活用することで、森林保全の健全化と地域経済への寄与することも視野に入れ、木のプロフェッショナルである小田原地区木材業協同組合にプラン開発の協力を依頼しました。施工面でも、地元の熟練職人と若手大工が協働し、伝統技術の継承と現場力の強化、若手の育成をねらいとして「活きた現場」として公社住宅のリノベーション(木質化)に取り組み、2024年度までに約110戸の木質化リノベーションを行いました。
■喜びの受賞コメント
神奈川県住宅供給公社 賃貸事業部 運営企画課 金子
「再編事業前の二宮団地は空室が4割を超え存続の危機にありました。その一方で、海と山が揃う立地、自然と触れ合える環境、そしてゆとりのある敷地という強みもありました。こうした「里山ライフ」を活かすことが、新たな再編事業の出発点となりました。再編事業の取り組みは、小田原地区木材業協同組合をはじめ、地域住民の皆さまのご理解ご協力のもと、成し遂げられたものです。皆さまとともに歩んできた10年間が、今回評価されたことを大変嬉しく思います。これを一つの節目として、さらに工夫を重ねて次へと繋げていきたいと思います。」
小田原地区木材業協同組合 大山さん
「公社の方からいろいろな課題を出されながら、時には難しい要望もありました。しかし、その分やりがいを感じ、チャレンジしてやって良かったと思います。公社の熱意に応えたい一心で取り組みました。このような賞をいただけて本当に嬉しいです。今後も、地域の資源循環の輪を広げていきたいと、改めて感じました。」
●関連WEBページ
県内産木材の活用
https://www.kanagawa-jk.or.jp/action/woods.html
●関連ブログ
住むほどに好きになる町、二宮。「二宮移住体験ツアーズ」をレポート!(2025.01.20)
https://www.kousha-chintai.com/blog/landscape/post-70.php
二宮団地の絆をつむぐ、百合が丘商店街(2024.05.13、2025.10.1追記)
https://www.kousha-chintai.com/blog/landscape/post-55.php