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住まいとくらし~団地のトイレの歴史~

2023.08.10

 公社第1号物件からトイレは水洗だった

 公社が設立された翌年、1951(昭和26)年に賃貸住宅第1号として竣工した大和町団地(横浜市中区、2016(平成28)年にフロール横浜山手に建替済)はすでに各戸に水洗トイレが設置されていました。集合住宅では共同トイレが一般的だった時代です。
 各部屋にトイレが設置されていることに加え、この時代の水洗トイレはかなり珍しく、大和町団地に住んでいる人のところへは知り合いがわざわざトイレを見に来たという話もあります。
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公社の賃貸住宅第1号の大和町団地(横浜市中区)


 このころのトイレは和式便器を床から1段上げて設置する「汽車式」と呼ばれたものでした。列車のトイレスペースが狭く、小便器と大便器を両方設置できなかったため考案されたとか。

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列車トイレ様の水洗便所(通称「汽車便」)東芝小向住宅(川崎市幸区・1953年竣工)
『神奈川県住宅公社5年のあゆみ』より
https://www.kanagawa-jk.or.jp/ebook/nenshi/kjk5yayumi/#page=34

 洋式便器の登場とその後の進化

 公社の団地では、1963(昭和38)年頃には洋式便器に切り替えています。1958(昭和33)年に着工した、山田町共同ビル(横浜市中区、現:フロール山田町第1、第2、第3)「汽車便」を使用した物件で、その後、1963(昭和38)年に竣工した汐見台第1賃貸住宅では、洋式のトイレとなっています。

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1958(昭和33)年11月発行の山田町共同ビルの再開発計画のパンフレット。まだ「汽車便」である。

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汐見台賃貸住宅の竣工写真。この頃から公社住宅のトイレは「洋式」へ。
汐見台竣工資料より

洋式水洗トイレが標準設計となった後も、まだ普及し始めで、しばらく便器には使い方の案内ラベルが貼ってありました。

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若葉台団地(横浜市旭区、1983(昭和58)年築)に残っていた案内ラベル【画像をクリックすると拡大されます】

 すでに1960年代には暖房便座や洗浄機能付き便座は発売されていたようです。1980年にTOTOの「ウォシュレット」が登場すると「おしりだって、洗ってほしい。」のCMで一躍一戸建てや分譲マンションといった持ち家を中心に普及していきます。その後21世紀に入ると公共施設や商業施設でも温水洗浄便座は珍しくなくなります。
 賃貸住宅では長らく普及しませんでしたが、公社の近年の新築物件では、温水洗浄便座が標準となっています。

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現在の公社の賃貸の新築物件は温水洗浄便座が標準装備となっている。フロール梶が谷川崎市高津区・2021年竣工)

 みんなのトイレ

 新築物件の団地共用部では「みんなのトイレ」を導入しています。「みんなのトイレ」はユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、障がい者、高齢者はもとより、だれもが円滑に利用しやすいトイレとして、 2002年に神奈川県条例にて定められたものです。
 手すり、洗面器、鏡などを適切に配置するほか、オストメイトを設置したり、介助が必要な場合を見越して男女共用としたりしています。

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みんなのトイレ フロール新川崎(川崎市幸区・2017年竣工)




●関連動画
汐見台団地記録映画