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令和5年度移動販売事業報告~利用者・事業者の声、見えてきた移動販売の課題を整理~

2024.04.23

令和5年度 移動販売事業報告書

 当公社では、入居者の高齢化に伴い、郊外に立地する団地では買い物支援の必要性が課題として挙げられており、令和3年度に策定した経営計画(令和3~7年度)の「社会環境の変化に応じた取組み」として検討を行ってまいりました。

 同時期に団地自治会からも買い物支援として「移動販売」の受入れに関する相談があり、新しい日常に対応した住環境の整備として一部の団地で試行的に実施しました。また、令和3年度に実施した公社団地にお住まいの方を対象としたアンケートの結果では、コロナ禍の影響や新しい生活様式への機運もあり一定のニーズがあることが確認できました。このことから、安全かつ円滑な移動販売の普及に備えるため、団地自治会や管理会社との協働など所要の手続きやルールについて「実施要綱」を定めました。

 この取組みは、高齢化が進む団地内の共用部敷地を活用することにより、お住まいの方の利便性を向上し公社物件の魅力をアップさせるとともに、近隣商業施設までの移動が難しい買い物困難者を支援し、併せて団地自治会が中心となって行っている見守り活動に資することを目的としました。令和5年度は、この取り組みの実施効果、展開の可能性を探るべく実施状況の観察を行い、住民、事業者へのヒアリングを行いました。

 本報告書では、取組みの結果や住民・事業者の声などをまとめております。同じような取組みの参考資料としてご活用いただけますと幸いです。
※PDF版の「令和5年度 移動販売報告書」はこちらをご覧ください。

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2.令和5年度実績

問合せ及び受入れ実績

令和5年度は、6事業者より公社へ問い合わせがあり、そのうち4事業者が公社団地での実施に至りました。

実施件数

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実績一覧

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※1「高齢化率」=65歳以上の居住者数÷全居住者数(令和6年3月31日現在、契約者からの届け出情報に基づく)
※2「竹山団地の高齢化率」は、神奈川大学の学生寮となっている住戸を除いて算出



3.主な利用者(住民)の声

買い物支援に関して

・団地の立地からすると、坂の昇り降りをせずに買い物が出来るのは助かるし、とても便利になった。(浦賀)
・実店舗だと人が多くて落ち着かないが、移動販売だと落ち着いて買い物が出来る(相模原田名) 
・ネットでも買い物が出来るが、やはり移動販売が団地に来てくれて、商品を直接見て買い物が出来る方が良い。商品を選んだり、色々と眺められるなど、ネットでの買い物にはない「買い物の楽しさ」が感じられる。(浦賀)

交流、見守りに関して

・誰かと顔を合わせる機会になって良い(浦賀)
・移動販売が来ると自然と会話が生まれており、ひとつの交流機会になっている(浦賀、相模原田名)
・顔を合わせて話すことができ、ちょっとした見守りの効果もある。移動販売が始まったことをきっかけに久しぶりに会う人もいた(戸塚深谷)
・買い物は、通院帰りなど何かのついでに出来る事なので、数回利用が無い程度では危機意識にはつながりづらい(浦賀)


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浦賀(横須賀市)

その他

・徐々に利用者が減少し、固定客になってきている(浦賀、相模原田名)
・移動販売は積込出来る商品の数量に限りがあり、他の場所も巡回してくるので仕方ない面ではあるが、欲しい商品が少ない、もしくは売り切れていることがある。(浦賀、相模原田名、戸塚深谷) 
・販売時間が短く、来ていることに気づかず利用できないことがある(浦賀、上白根、戸塚深谷、相模原田名)
・団地まで来てくれているが、階段の昇り降りやちょっとした距離でさえも難しく、利用したくても利用できていない人もいると思われる(浦賀、相模原田名、上白根)



4.事業者の声

印象に残っているお客様とのエピソード

・今までなかなか外に出なかったけど、移動販売が来てから会話が楽しみで外に出るようになったとのお言葉を頂いた
・「本当に助かる」「この商品が好き」「寒い中(暑い中)ご苦労様」など、毎回感謝や励ましのお言葉を頂けて大変やりがいを感じております。
・昨年の春頃に始めてご来店下さったお客様が、今では毎回いらして閉店作業を手伝ってくださいます。
お客様同士で気を配りあって、安否確認などもしてくださり話してくださいます。最近ご来店されないお客様のことについても、情報を教えてくれたりします。

理想とする市場特性と比較したとき、ギャップを感じた要素は?

・高齢者の割合が非常に多く、若い世代のお客様の利用はかなり少ない
・変化を好まず同一商品を購入し続ける傾向があり、やや保守的と感じる
・想像以上にキッチンカーに無関心

販売において、お客様から好評・反応が良かった改善例

・ご希望の方には、商品を住戸まで運んであげることで、重いものでも気軽に買って頂ける
・お客様のお名前や好みを覚えることで、好意的な評価を頂ける
・商品名や価格などの文字サイズを大きくすることで、問い合わせが減少した
・季節感のある商品を提供

お客様から伺った「求める商品、サービス」

・お買い上げ商品の住戸までのお届けサービス
・キャッシュレス、ポイントカード対応
・商品の見やすい価格表示



5.実施結果

●住民のニーズとマッチした団地(販売地点)においては、一定の買い物支援と交流機会の創出に効果があった。特に、郊外型団地、周辺に坂などが多く高齢者にとって移動が大変になる団地では継続的な利用があり、続けてほしいという住民要望が多くみられた
●今年度新たにスタートした販売地点のうち、3地点で継続が困難となり終了となった。

要因としては、以下が考えられる

①移動販売の収益確保の難しさ
 移動販売においては、その運搬・販売に係る人件費、ガソリン代など諸経費をカバーできるだけの収益が必要となる。そのため、固定客がついたとしても、その利用人数が少ない場合には継続が困難となる。

②販売地点の周辺環境
 団地周辺が平たんで移動しやすく、歩いてまたはバスで商業施設まで行ける場合は、移動販売の利用率は低い傾向にある。これは、移動販売の価格設定が店頭より割高、商品数が限られること、販売時間が短いことなど、移動販売の性質と自力で商業施設まで行くことを比較して後者が選ばれることが推察できる。
 逆に、周辺環境が坂道など移動がしにくい販売地点においては、一定の利用が見受けられる。

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相模原田名(相模原市中央区)

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戸塚深谷(横浜市戸塚区)

6.令和5年度の考察

●高齢化率が高い団地だとしても、その立地が平たんな場所であり歩いて行ける商業施設があるケースでは、移動販売の利用率がとても低い傾向にある。逆に、周辺に坂道が多いケースや、周辺の商業施設まで行くにはバスなど車が必要なケースでは、一定の利用が見込める

●事業者に継続してもらうためにも、継続した利用と一定の収益が確保できる集客が必要。高齢者によっては、来ていることに気づかない、忘れてしまうといったことがあるため、継続して利用してもらうための工夫が必要

●高齢化率、立地、住民の理解や自治会の協力(顔が見えるか)が、移動販売を継続するための重要な要素であると考えられる。住民の理解・協力について、自治会が販売に協力的である販売地点は比較的長く継続出来ている傾向にある

●団地まで移動販売が来たとしても、それすら利用することが難しい方々(販売場所まで行くことが難しい)もいるという実態がある

●公社としては、場所を貸し出す立場として高齢の方が安心して移動販売に来られる環境整備が求められる。平坦な足場、通いやすいルート、可能であれば雨天時の対応など

実施結果及び考察からのまとめ

 単なる買い物機会の提供にとどまらず、ちょっとした見守りの効果コミュニケーションのキッカケとしても有効であると考えられます。一方で、継続性に関しては事業者のみでなく、公社、住民が一体となって考え取り組む必要があります。
 この結果を踏まえ、次年度においては積極的に公社団地へ移動販売を誘致するための取組みを実施していく予定です。

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戸塚深谷(横浜市戸塚区)

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東本郷(横浜市緑区)

7.見えてきた課題とその方向性

 公社団地における移動販売事業を、居住者の利便性向上、買い物支援つなげるための課題として以下の3点を検討していきます。

(1)移動販売が継続しやすい環境、しくみを検討・整備する

 居住者の利便性向上、買い物支援としてスタートした後、その取組みを継続させることが求められます。継続させるためには、事業者の収益確保も必要ですが、毎回利用する人だけでなく、たまに利用する人、生活シーンに合わせて利用する人など、利用者の母数を増やしていくことも重要です。
 そのためには、事業者だけに任せるのではなく、公社や住民組織も含めた顔の見える関係性を築くことも必要だと考えます。そうすることで、改善などの対処が行いやすくなり、取組みの継続につながり、支援が必要な人にも安定して届けられる環境になっていくと思われます。

(2)買い物支援を必要とする人にサービスを届ける

 団地の周辺に商業施設がないため、団地まで移動販売車が来てくれることでその販売場所まで行き買い物が出来る、といった支援は少しづつ形になって来ています。しかし、主な利用者である高齢の方々からは、移動販売が来ていることに気づかなかった、販売時間が短く間に合わなかったという声も聞こえてきています。また、団地内の販売場所まででさえ行くことが難しい人がいる実態も見えてきました。現在は、インターネットでも食料品・日用品を購入して届けてもらえるサービスがありますが、品物を実際に見て購入できる「買い物の楽しさ」を移動販売では提供できると考えています。
 そこで、事業者や住民組織と連携して、買い物支援を必要とする人を把握し、サービスを届けるための検討を行っていきます。

(3)事業者や地域団体に対し情報発信、情報収集を積極的に行う

 移動販売車の実施状況はもちろん、どういった体制で行っているか、どういった課題があるかなど、販売地点ごとでも状況は異なります。そうした情報を事業者や地域団体へ発信することで、関係人口を広げ様々な対応や展開を行いやすい環境を目指します。
 また、住民組織や事業者などへのヒアリングを継続的に行うことで、情報の陳腐化を防ぎ、移動販売継続のための取組みを推進していきます。

8.令和6年度の取組み

 令和6年度は、これまでの実施結果と課題から、公社賃貸住宅での利便性向上、買い物支援に向けて以下の取組みを推進してまいります。

未実施団地への展開

 第1四半期で未実施団地での導入方針を整理し、第2四半期より湘南、西湘地区での導入について事業者へ呼びかけ、公募の検討、行政等関連団体への相談等を実施

公社SNSを活用した積極的な広報活動(募集、活動報告)(随時)

 事業者、地域関係者とのつながりを形成することを目的とします。これにより、未実施団地への展開や、新たなサービスなどの可能性を検討します。

移動販売事業継続のための仕組み検討

 令和5・6年度の実績を踏まえ、第3四半期までに仕組みの素案を作成し、公社、事業者、住民が協働して取り組むことのできる環境を目指します。

移動販売事業の分析、情報収集(ヒアリング、実施経過)(随時)



新規住民サービスの検討

 相模原田名団地に参入しているキッチンカーが新たな事業(鮮魚、加工食品の販売)を開始予定のため、そのタイミングに合わせ事業者と協力し新たな住民サービスを検討。
 ①事前注文できる(欲しい商品を必ず購入できる)
 ②家まで配達してくれる(配達員を団地住民から募る)
 =見守り機会の向上、配達協力してくれた方へのインセンティブなど

今後の検討課題

 ①子育て世帯の買い物支援
  日々の家事の負担を少しでも軽く出来るような、買い物サービスの検討
 ②CO2削減など環境に配慮した取組み
  事業者とともに以下の内容に配慮して移動販売を検討していきます
  ・CO2削減(移動販売サービスの充実により、居住者が買い物で車を運転する機会を低減、EV販売車の推奨)
  ・省エネ対策

9.その他

担当者の想い

 買い物支援だけにとどまらず、外出や交流の機会といったウェルビーイングな日常生活に寄与できるような取組みとして、公社として出来ること、出来そうなことを積極的に検討していきたいと思います。

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上白根(横浜市旭区)

メディア掲載

・令和5年4月11日
【公社ニュースリリース】公社の団地で移動販売の受入れを本格的に開始します
・令和5年4月12日
【日本経済新聞(紙面、電子版)】団地内で移動販売しやすく 神奈川県住宅供給公社
・令和5年6月1日
【神奈川新聞(紙面)】県内移動スーパー事情
・令和5年8月1日
【公社の賃貸ブログ】団地を元気に!公社の団地で移動販売(キッチンカー含む)が続々とスタートしています!
・令和5年12月8日
【日本農業新聞(紙面)】団地内で移動販売 県住宅供給公社と連携 JA横浜
・令和5年12月14日
【公社の賃貸ブログ】移動販売がやってきた!地域交流や緩やかな見守りの役目も担う移動販売が公社団地で始まっています。
・令和6年3月21日
【公社の賃貸ブログ】地域の新たなつながりの場所「移動販売」。上郷西ヶ谷団地へ山中市長が住民の皆様と対話しました!